ただのパフォーマンスではない! いまクルマの電動化が推し進められる本当の理由とは

平均気温の上昇を抑えるためにはカーボンニュートラルが欠かせない

 欧州諸国では続々と電動化へのシフトが発表されて、各自動車メーカーも追従。アメリカも同様で、日本も菅総理が急に言い出して驚いた人も多いのではないだろうか。

 電動化といっても当初はハイブリッドも含めたものとしつつ、最終的にはBEV、つまりバッテリーとモーターのみで走る、純粋なEVのみとするため、クルマ好きからエンジンは残してほしいとか、そんなことができるのか? という声が多く挙がっている。

 何となくの流行や社会的意識の流れで打ち出しているわけではなく、もちろん理由がある。この理由があまり知られていないし、知っていてもなんとなく二酸化炭素を減らさないとダメ程度だろう。クルマやバッテリーを作っても二酸化炭素が出るから同じじゃないかという声も聞くが、そこも含めてじつは対応が必要となっているのだ。

 ここに大きく関係しているのが、2020年から運用が開始された気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」で、「今世紀後半のカーボンニュートラルを実現」するために、排出削減に取り組むことを目的とするとしている。

 カーボンニュートラルとは、二酸化炭素を含む温室効果ガスをゼロにするというもの。まったく出さないで産業活動などをするのは無理なわけで、排出と吸収でプラスマイナスにすればいいとしている。ちなみに吸収で一番わかりやすいのは植林だ。具体的には平均気温上昇を産業革命以前と比べて、「2度より十分に低く保つ」(2度目標)としつつ、「1.5度に抑える努力を追求」(努力目標)としている。

 昨年は産業革命前と比較して1.2度上昇していて、これは過去最高。たった1.2度に見えるが、猛暑、台風頻発などの異常気象や、北極や南極の氷はどんどんと溶けていることを考えると、環境にとってはとても大きい数値と言っていい。

 目標値を今世紀中に実現するには、2050年近辺までのカーボンニュートラルが必要という報告があって、急に2030年から2050年にかけて完全EV化と言い出したのはこれが理由。

 カーボンニュートラルには原発推進の思惑があるとか、二酸化酸素は温暖化にそれほど影響しない(水蒸気のほうが影響大)など、さまざまな意見もある。

 ただ今回の原稿としては、とりあえずさまざまな意見や異論などは別にして、EV化と言い出した背景にある事実しては以上に尽きるというわけだ。ただイメージがいいからEVにしよう、などという簡単なものではない。達成するには、ガソリンエンジンうんぬんのレベルではなく、手段は別にしてとにかくガソリンを使わないEVにシフトというわけだ。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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