ロータスの伝統を守りながら進化してきた
エヴォーラは完全に新設計のモデルとされましたが、基本骨格はエリーゼなどと同じアルミ押出材を接着剤で組み合わせたもの。広い意味ではエリーゼがあったからこそ誕生したモデル、ということができるでしょう。
このクルマはライトウェイトスポーツカーとしてのエリーゼ、サーキットにもすんなり対応できるエキシージに対して、ややグランツーリスモ色の強いモデルとして誕生。2008年に発表されています。仮想敵としたのはポルシェ911で、+2のシートを備えることもでき、内装も幾分かゴージャスな仕立てとされていました。
が、やはりロータス。これがまた初期のモデルの段階から、ビックリするくらい曲がるクルマだったのです。搭載していたV6エンジンは280馬力で最初から当時の911(=タイプ997)には及んでいませんでしたが、コーナーにおける速さと曲がる楽しさについては、凌駕していたといっていいでしょう。
それがより明確になったのは2015年のマイナーチェンジ。ここで登場したエヴォーラ400は、エンジンのパワーを56馬力上げたのみならず、各部をグラム単位で見直すことによって20kg以上の軽量化を施し、サスペンションの動かし方を見直し、空力を大幅に改善し……とフルモデルチェンジに近いと感じられるほど多くの箇所に手を入れ、コーナリングスピードと同時にマシンコントロール性も大幅に高めたのです。
モデルとして地味めな存在になっていたから知る人は少ないですが、ミドシップのスポーツカーとしては第一級といえるハンドリングのよさとコーナリングパフォーマンスの高さを誇れるモデルだったのです。
その3つのモデルが今年いっぱいで生産終了となるというのは、何だか今も信じられないような気分ですが、ロータスのインポーターであるエルシーアイの公式サイトを見ると、どのモデルも「新規オーダーは終了」と記されていて、国内在庫があればそれを手に入れることはできるけどおそらく望み薄、というような状況です。
エリーゼ、エキシージ、エヴォーラは、間違いなく21世紀のロータスを支えてきたモデルたち。それも根っこはしっかりと過去の名車たちに繋がる、伝統的なフィロソフィをもとに作られてきたモデルです。ステアリングを握ったことのあるドライバーは、皆、大きな感銘を受けてきました。もちろん、この僕も。
新たにデビューするエミーラが具体的にどんなクルマとして登場するのか、この原稿を書いている現在は知るよしもありませんが、ロータスのDNAがしっかり感じられるスポーツカーであることを心から願って止みません。