100年前から変わらない! 何年経っても軽自動車から超高級車まで「ワイパー」が大きな「変化」をしないワケ

雨水以外の付着物を拭き取る役割も持っている!

 今年も梅雨の季節がやってきた。ワイパーのゴムを交換し、タイヤの溝とエアコンの効きをチェックするのを忘れずに!

 とくにワイパーのゴムの鮮度は非常に重要。クリーンな視界確保に不可欠で雨の日のドライブの基本中の基本だ。

 そんな重要なワイパーだが、雨に濡れたフロントガラスを、ゴムのブレードで拭き取るというスタイルは、1903年にアメリカの女性が特許を取得している。そして1926年にボッシュが電動ワイパーを発表。

 その後、間欠ワイパーが発明されたり、リヤワイパーが登場したり(国産車では1972年の初代シビックが最初)、サーブ99にヘッドライトワイパーがついたり(1971年)、日産シーマにドアミラーワイパーがついたり(1988年)、トヨタ マークII/チェイサー/クレスタのオプションにサイドウインドウワイパーが用意されたり(1988年)、ワイパーブレードに設けられた穴からウォッシャー液を噴射するマジックビジョンコントロールが登場したり(2012年 ベンツSL)、空力を考えたフラットワイパー(エアロワイパー)、オートワイパー、マクラーレンの超音波ワイパー(?)なども登場したが、じつは100年前から基本的な構造はほとんど変わっていない。

 それはなぜなのか。

 それはワイパーの仕事が、雨水を払い除くだけではないからだ。クルマのフロントガラスには、比較的きれいな雨水のほかに、汚れた水滴や花粉にホコリ、雪や氷、虫の死骸や砂なども付着し、それらを物理的に拭き取ることも重要な役割となっている。

 そう考えたとき、ガラスの表面にある程度圧力をかけ、ガラスも傷つけず、密着感があって、摩擦や紫外線にも強く、柔軟性もあって、真夏から真冬まで使える……といった諸条件を考えると、アームの先端にゴム製のブレードを組み合わせたカタチは、ひとつの理想形であり、もはや変える必要のない完成した部品とみなされているのが現状だ。

 そもそもワイプ(wipe)という言葉自体が、「(汚れなど)を拭(ふ)き取る」という意味でもあるし、クルマ以外の乗り物、たとえばもっと高速度移動をしている飛行機にすら、クルマと同様のワイパーがついていることを考えると、構造的にはこの先も当面変わることはないだろう。

 ただし、黒くて丸いゴムの塊にしか見えないタイヤが、構造、素材の面で大きな進歩を遂げているように、ワイパーも曲線的なガラスへの追従性、コーティング剤への相性、耐久性、軽量化、空力対策などは、日々改良されている。

 やはり新しいワイパーはそれだけスグレモノで、装着すると実際視界良好で気持ちがよくなるものなので、毎年梅雨入り前には新しいワイパーに交換することを忘れずに。

 先人曰く「フロントガラスの汚いヤツに、運転の上手いヤツはいない」。

 完成されているワイパーだからこそ、ゴムの鮮度にはこだわって使うようにしよう。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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