専用プロテクターの装着により全長は40mm伸びている
日産のコンパクトSUV、キックスに対して個人的に抱いているイメージは、快活とかアクティブといった言葉が似つかわしいのだが、この日の朝、初対面したキックスAUTECHが醸し出す雰囲気は、ベース車とはちょっと違ったものだった。専用のダークブルー×ピュアブラックの2トーンカラーのおかげでもあるが、一層スポーティさを高めていながら同時に大人っぽさも漂う。キックスにこういう一面があったのかと唸らされた。
今回のキックスが第7弾になるという、このAUTECHシリーズで掲げられたコンセプトは「プレミアムスポーティ」というから、まさにコレ、狙い通りの仕上がりに違いないのだが、それにしてもコンセプトをしっかり具現化するデザイン力、カラーやマテリアル選びのセンスはさすがと言うほかない。この辺り、長年に渡って日産車のカスタマイズを手掛けてきただけのことはある。
エクステリアで何より効いているのが、車体下部を一周するフロントプロテクター、サイドシルプロテクター、リヤプロテクターだ。きらびやかなクロームではなく抑制の効いたメタル調フィニッシュとされた、これらのアイテムに視線が集まることでクルマは俄然、低重心に見えているのだ。
しかもじつは、このプロテクターのおかげで全長は40mm伸びていて、とくにリヤスタイルを伸びやかに見せる効果も発揮している。全体に落ち着きを感じさせるのは、こうしたツボを押さえたディテールの積み重ねの為せる技と言えるだろう。
一方、精悍さが際立っているのがフロントマスクだ。ダーククロームとされたグリルフィニッシャー、そして専用シグネチャーLEDによって、落ち着いたトーンのなかにしっかりとした主張を感じさせる。バックミラーに映る姿は、きっと何かが違うぞと感じさせるに違いない。そんなことを思いながら、いよいよ走り出すことにした。
早朝の首都高速を抜けて外環自動車道、そして関越自動車道へとクルマを進めていく。キックスと言えばプロパイロット……と言いたいところだが、ここまではクルマの感触をリアルに感じられるように、オフのままで走った。
改めて感じたのはe-POWERのドライバビリティの良さで、とくに出足の良さと、その先の加速の滑らかさが印象的だ。思ったとおりに速度をコントロールできるから、アクセルを深く踏み込んで、踏み過ぎて少し戻したりという必要がほとんどなく、気持ちが良いし、とにかくラク。プロパイロットなんていらないのでは? なんて気持ちにすらなってきた。
いやいや、しっかり試さなくては……というわけで、関越自動車道から上信越自動車道に入る辺りからは、プロパイロットのスイッチを入れて進んでいく。メインスイッチを入れてセットしたら、続いて速度を設定。しばらくするとステアリングアシストも入り、リラックスした運転をクルマがしっかりサポートしてくれた。
このプロパイロットと、電気モーター駆動により加減速が非常に滑らかなe-POWERのマッチングは端的に言ってサイコー。通常の速度調整はきめ細やかだし、加速時の力強さはいわゆるコンパクトカーの常識を覆すほど。本当に快適なクルージングが可能だ。おかげで能登半島まであっという間に着いてしまった。