歩行者エアバッグが高く評価された
ひとつは、やはり衝突安全性能についてで、レヴォーグのみ歩行者エアバッグを装備している。これは、インプレッサやXVで先に装備されたもので、他車では装着がない。歩行者とクルマの接触で深刻な傷害をもたらすのは頭部だ。フロントピラー下端やワイパーといった硬い金属部分に頭が当たることで損傷を大きくしている。そこに対処したのが、SUBARUというわけだ。
フロントのボンネットフードとフロントウィンドウ下端の狭い隙間から、ワイパー及びフロントピラーへ適切にエアバッグを展開させるのはかなり難しい。そのためにボンネットフードを跳ね上げるといった装置を使うと原価が上がってしまい、高価な車種にしか採用できなくなる。もちろん、通常の運転席での視界の確保や、外観の造形への影響も考慮しての開発となる。そうした困難を乗り越えての実用化と標準装備化が、SUBARUの歩行者エアバッグには込められている。
また、たとえば買い物用のカートなどとの軽微な衝突で歩行者エアバッグが開いてしまったのでは、人的被害でないにもかかわらずクルマを利用できなくなる。そうした状況を踏まえたきめ細かな配慮も開発に必要だった。
シートベルトの着用を促す警報も、乗員に実行する気持ちを起こさせるような警告の出し方が求められる。鬱陶しく思わせてしまえば、かえって逆効果となりかねない。
以上のように、装備が正しく機能すればよいだけでなく、実情にあった性能でなければ利用されなくなる懸念も生じてしまうのだ。
SUBARUは現在、トヨタと提携関係にあり、そのトヨタはマツダやスズキとも提携している。それであるのに、歩行者エアバッグがなぜ広がらないのか。背景には企業側の理由があるのだろうが、人を中心にと異口同音にいいながら、じつは別の視点で新車開発をしている日本の自動車産業に安全意識の遅れがあるともいえそうだ。