今のホンダのブランド内では上級車種に位置する
従って先代ヴェゼルも売れ行きは好調で、2014年から2016年には、SUVの国内最多販売車種になった。2017年と2018年は、SUV国内販売1位をトヨタC-HRに譲ったが、2019年にはモデル末期ながらもヴェゼルが1位に返り咲いた。
このようにヴェゼルの高人気は、先代モデルによるところが大きい。先代モデルも、発売後1か月の受注台数が3万3000台に達していた。新型ヴェゼルは先代型からの乗り替え需要も豊富だから、好調に売れて当然といえるだろう。
ホンダのブランドイメージも変化している。今のホンダの国内新車販売状況を見ると、N-BOXをはじめとする軽自動車+フィット+フリードを合計すれば、国内で売られるホンダ車の70〜80%を占めてしまう。中高年齢層のユーザーにとって、ホンダのブランドイメージはスポーティカーだが、今の比較的若い人達から見れば「小さなクルマのメーカー」だ。
そのためにステップワゴンやオデッセイは、以前に比べて売れ行きを下げた。その点でヴェゼルは、コンパクトSUVだから、今のブランドイメージにも上限ギリギリで合っている。今のホンダにとって、ヴェゼルが事実上の最上級車種なのだ。
ヴェゼルの人気動向を販売店に尋ねると以下のように返答された。「ヴェゼルは従来型からの乗り替えが多いが、ステップワゴンやオデッセイからのダウンサイジングもある。さらに日産エクストレイルなど、他メーカーのお客様が購入されることもあるから売れ行きを増やした。ただし納期は長く、2021年6月上旬の契約で、大半のグレードが2021年末の納車になる。最上級のPLaYは2022年(来年)6月だ」。
ヴェゼルは商品力が高く、今のホンダのブランドイメージも追い風になって人気を高めたが、納期を半年から1年に遅延させながら「1カ月で3万台を受注」と誇ることはできない。今はホンダに限らず、各メーカーともに受注台数を人気の証として公表するが、宣伝に使うなら納車を伴った「登録台数」にすべきだ。購入した顧客が納期の遅延で不愉快になっているときに、「1か月で3万台を受注」と宣伝されたら、どのような気分になるのか。ちょっと考えればわかることだろう。