メンテナンスのしやすさもクラウンが選ばれる理由
クラウンセダンやクラウンコンフォートの“50万kmメンテナンスフリー”に対し、一般向けのクラウンも個人タクシーやハイヤー、企業の役員送迎需要があるので、「走行距離30万kmまでは手間がかからず乗れるように」と設計されているといわれている。そのため、耐久性という観点でタクシー専用車に近いクラウンが選ばれるのである。
また、タクシーとして使用している場合、たとえば誤って自損事故でドアに損害を与えてしまったとしても、新品のドアパネルに交換ということはまずしない、ドア以外でもリビルトパーツを使い、コスト削減や修理時間の短縮(新品は取り寄せなどで時間かかりやすい)をはかるのである。そうなると、タクシーとして多く使われているクルマの方ほうが、リビルトパーツも豊富に出まわっているので、便利ということもあるのだ。
最近の新車ではヘッドライトがLED化されていたりするが、かつてハロゲン球や、リヤコンビランプは電球が主流だったころは、球切れが起きたら自分たちで交換しなければならなかった。その時の整備性などもタクシー車両として需要の多いクラウンでは、意識的に自家整備がしやすくなっていた。
つまり、長い間日本のタクシーのメイン車種として君臨していたクラウンにタクシー業界としては絶大な信頼を持っているのである。また、JPNタクシーをいまでもラインアップしているというのも大きい。つまり、タクシー業界とのパイプがいまもつながっているということである(タクシー車両の販売についてのノウハウが豊富)。
いまどきのメルセデス・ベンツ セダンは、中国市場をかなり意識し、最新型では乗り味やシートは昔に比べればソフトな印象を受けるが、少し前にEクラスのタクシーに乗った時に、「ベンツだと運転もラクでいいんじゃないですか」と聞くと、「ロング(長距離利用)のお客様を乗せ、高速道路を走った時はやはりいいですねえ。しかし、都内の一般道路を走っていると足まわりが“硬い”印象を強く受けますね。その点ではクラウンは日本の道路にあった足まわりにしていると改めて感じます」と話してくれた。60年近く日本のタクシー車両の代表として君臨してきたのは伊達ではないのだ。
そして、このクラウンの存在があるからこそ、実態はともかくとしても、トヨタ車全体へのドライバーの信頼感が厚く、もちろんディーラーのタクシー車両販売へのバックアップも充実していることもあり、クラウン以外のトヨタ車もタクシー車両として選ばれやすくなっているのではなかろうか。