創業時の社会や人の役に立ちたいという想いを大切にしている
ホンダは2021年6月11日、従業員が考案した独創的な技術・アイデア・デザインを発掘する社内公募型の新事業創出プログラム「IGNITION」初となるベンチャー企業「Ashirase(あしらせ)」を設立したと発表した。Ashiraseは視覚障がい者向けのナビゲーションシステム「あしらせ」の開発を進めており、2022年度中の発売を目指している。
ホンダは創業以来、人々の生活を助け、豊かにする製品の開発に取り組んできた。その原点は「社会や人の役に立ちたいという想い」(IGNITIONの審査委員長を務める水野泰秀さん)であるとして、2017年に本田技術研究所でIGNITIONをスタートした。
IGNITIONは勤続年数や所属部門に関わらず、正規従業員であれば誰でも応募できる。最終審査まで通過したアイデアは社内で新事業として育成してきた。2020年からは起業しベンチャーとして事業化することを追加、2021年に全社へ展開した。これにより、スタートアップ企業として育成する際には、その後独立したまま事業を継続するか、ホンダがM&Aを行う2通りの道筋を用意する。
事業開発期間中は専門スキルを持った社内特別編成チームによる支援を行い、事業化判断にはベンチャーキャピタルとの連携を図る。期間は半年を基準に、起業した際にはベンチャーキャピタルなどと連携して出資するが、独立性を担保するためホンダの出資比率は20%未満としている。
今回、起業第一号となったAshiraseが開発を進める「あしらせ」という製品は、視覚障がい者の歩行をサポートするシューズイン型のナビゲーションシステムだ。靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイスと、GNSS(衛星測位システム)の情報をもとにしたスマートフォンアプリで構成される。
アプリでナビのルートを設定し、靴の中に取り付けたデバイスが振動することで案内する。直進時は足の前方の振動子が動き、右左折地点では右側、または左側の振動子を動かすことで歩行をサポートする。振動子は足の神経層に合わせた場所に配置しており、白杖を持つ手や周囲の音を聞く耳を邪魔することなく進行方向を直感的に理解できるため、ルートを気にせず安全に歩行することができる。
Ashiraseの代表取締役である千野歩さんは自動運転システムのエンジニアだ。身内の事故をきっかけに視覚障がい者の自由な移動をサポートする「あしらせ」の開発を進めてきたという。Ashiraseにはリアルテックファンドの代表を務める永田暁彦さんが支援する。
詳細はAshiraseの公式ウェブサイトにて。
https://www.ashirase.com/