フィットの販売不振はヤリスに負けたわけじゃない! 4代目が陥った深刻な「戦略ミス」とは (3/3ページ)

現代の女性はアグレッシブなイメージのクルマを選ぶ

 また、見方によっては“かわいい”イメージの強いエクステリアデザインも影響しているのではないかと考える。エッジのきいた顔つきがライバルで多いなか、資料によると“親しみを感じさせるフロントビュー”となっているフィット。そのフィット以外でもホンダ車で採用の目立つ、一部では“でこっぱち”とも呼ばれるグリルレスフロントフェイスも採用している。

 現在のように、“ジェンダーフリー”などが強く叫ばれるなかで、“コンパクトカー=かわいい”は誤解を招いてしまうリスクが高い。つまり、昭和時代からの「軽自動車やコンパクトカーのメインユーザーは女性」と、メーカーが決めつけていると捉えられてしまいがちともいえる。いまや軽自動車やコンパクトカーは、高齢ユーザーや男性ユーザーも多くなってきており、けっして“女性向けのクルマ”ではない(女性ユーザーは確かに目立つが昔ほどではない)。

 しかも、そもそも「女性は小さくてかわいいクルマを好んで乗る」という見方は、日本だけのいわば“ガラパゴス的トレンド”となっている。アメリカで聞いた話では、女性のほうがよりアグレッシブなクルマを好むとのこと。男性と仕事で平等に渡り合うなかで、男性に負けないという自己表現的意味合いも大きいとのことであった。以前取材で訪れた、レクサス店の女性スタッフは、颯爽とISクーペに乗って帰宅していった。

 以前、日産の初代ジュークがデビューした時に、北米も含めて世界的に大ブレイクした。アメリカやロシアなどの地域で、キャリア志向の若い女性がよく運転している印象を受けた。

 ある時、中国でガイドをしてもらったセダンに乗る女性に、「今度乗りたいクルマは?」と聞くと、BMW X3(SUV)と答えてくれた。その理由を聞くと「腰高でシートポジションが高いので威圧感があるから」とのことであった。このような女性のニーズも今日のSUVブームを招いた理由のひとつかもしれない。

 デザインに対するイメージは千差万別なので、筆者だけが感じていることだと言わないが、いまの世の中は、「男っぽさ」や「女っぽさ」を感じさせてしまうのがリスクの高いことであるのは間違いないだろう。そのような傾向を筆者のような「オジさん」でも感じてしまうようでは、筆者よりも感度の高い、いまどきの女性にあっては違和感を覚える人も少なくないのではないだろうか。

 フィットの販売が苦戦しているのは、製品としての出来不出来ではなく、ホンダの戦略ミスがいくつも重なった結果が招いたのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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