最大のライバルは身内のN-BOXだった
ただ、ヤリスをはじめとしてライバル車の勢いに押されているのがおもな苦戦原因かといえばそうではない。やはり、フィットの最大のライバルはホンダN-BOXとなるだろう。
2020事業年度締め年間販売台数では残念ながら、“日本一売れているクルマ”は、ヤリス(含むヤリスクロス)に奪われてしまったものの、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)統計によると、2020事業年度締め年間販売台数では19万7900台を販売し、軽自動車のみで2位となるスズキ スペーシアに約5万台の差をつけて、軽自動車販売トップとなっている。
2019事業年度比で5万台落としているのは、新型コロナウイルス感染拡大初期の1回目となる緊急事態宣言発出による、4月と5月の全国レベルでの外出自粛要請が大きく影響しているが、2位のスペーシアは2019年比で約1.4万台という減少幅で押さえている。販売苦戦が指摘されているダイハツ タントでも2019年比で約4.4万台の減少となっているので、N-BOXの5万台減は気になるところ。N-BOXは2020年12月にマイナーチェンジを実施したので、2020事業年度の大半が末期モデルとなるのだが、軽自動車は末期モデルでも売れ続ける傾向が強い(安く買えれば末期モデルでもいい)ので、それだけでの5万台減ともいいきれない。
そんなN-BOXだが、2020事業年度におけるホンダ車の国内総販売台数における軽自動車の割合が約53%となり、同じく総販売台数におけるN-BOXの割合が約32%となっている。ホンダの国内販売は軽自動車というよりは、“N-BOX頼み”といったところが目立っている。
このような状況はコロナ禍以前から顕著となっており、いま始まったことではない。ホンダに限らず、軽自動車は売りやすいので、何もせずに放っておけば軽自動車の販売台数ばかりが多くなっていくのは自然の流れ。
ダイハツからのOEMとなるが、ピクシスシリーズ(軽自動車)をラインアップするトヨタでは、セールスマンが軽自動車を販売しても実績評価しないとするディーラーもあるようで、さらに軽自動車だけでなく、より台当たり利益の多い車種の販売を積極化させるような実績評価制度を採り入れ、軽自動車はじめ薄利なモデルに販売が偏らないようにしている。
いま世の中では、“プチ贅沢”というものが流行っているが、トヨタのようにアルファードやハリアーなどの高収益車種にお客を引っ張り込むことがホンダでは十分できず、N-BOX内でオプションを増やすとか、アップグレードをするなどして“プチ贅沢”が完結しているとも聞く。
出来が良すぎるだけでなく、フィットよりもリセールバリューにも期待できるので、N-BOXが選ばれやすくなってしまうようだ。繰り返すがフィットの最大のライバルはN-BOXなのである。