派手さだけじゃない! 見た目どおりの性能も発揮!
レーシングカーの象徴ともいえるウイングは、装着するだけでスポーティーさ、レーシーさを強調でき、それ以上にダウンフォースを得られるというメリットがあった。
ただ、大きなウイングは空気抵抗にもなりうるため、装着できるクルマはハイパワーで速いクルマに限られるから、逆に大きなウイング=高性能車という記号的な役割も果たしていた。
もっとも最近は、ボディ下面の空気の流れのほうが空力的に重要で、リヤウイングもそこでダウンフォースを発生するというより、車体後方の空気の乱れを少なくするという役目にウエイトが置かれるようになり、かつてのような派手なウイングは減ってきた。
そうしたなかで、純正ウイングなのに派手でインパクトのあるウイングを装着していたクルマをいくつか振り返って見ることにしよう。
1)メルセデスベンツ190E 2.5-16エボリューション2
日本では「エボリューション」といえば、ランサーエボリューションのイメージが強いかもしれないが、ベンツはドイツ国内で人気のあったツーリングカーレース、DTMを制するために1986年にホモロゲーション・モデル、「190E 2.5-16エボリューション1」を投入。
さらに1990年にその発展型の「190E 2.5-16エボリューション2」が登場。
前後のオーバーフェンダーや市販車でも235馬力、DTM仕様では373馬力にチューニングされたエンジンにも注目は集まったが、なにより前後のスポイラー、とくにリヤウイングの大きさは衝撃的だった。
このウイング、DTMを見据えた大真面目なもので、ベンツの空力部門とシュトゥットガルト大学が協力し、リヤに最大で57.1kgのダウンフォースがかかるように設計された(リトラクタブルフラップ付きのウイングで、リヤのアンダースポイラーはチルト式)。
2)フェラーリF40
エンツォ・フェラーリの存命中に開発された最後のロードゴーイングレーシングカー=F40。
リヤカウルと一体化した巨大なウイングがシンボルだったが、これはもちろんピニンファリーナのデザイン。彼自身はこうした空力パーツは好みではなかったようだが、当時のタイヤ+電子制御なしで、最高出力478馬力・最大トルク58.8kgf・mを後輪だけで受け止めるには、このウイングは不可欠だった……。