同じく方向転換したキャデラックは”らしさ”を残す
今回クラウンを試乗する直前に、キャデラックCT5に試乗する機会があった。かつてのキャデラックといえば、大きなテールフィンを持つ1959年式エルドラドを代表に、とにかく大きいボディに大排気量のV8エンジンを搭載していたが、2000年代に入ると本格的に方向転換を進め、2010年代には直4エンジン搭載モデルが当たり前のようにラインアップされるようになった。
CT5はCTSの後継として2019年に初公開されたモデル。アメリカ内陸州では直4に否定的なところも多いので、アメリカ向けには3リッターV6が用意され、またハイパフォーマンスモデルとなるCT5-Vには6.2リッターのV8もラインアップしているが、メインは2リッター直4となる。
しかし、実際に運転して見ると、さすがに昔の“船を漕ぐ”ような、かなりソフトなイメージはないものの、クラウンほどの固さは感じない。個人的にはフランス車のようなソフトイメージの乗り味に、“キャデラックらしさ”を感じることができた。2リッター直4といっても、アメリカンブランドらしく、トルクにふった特徴的なレスポンスもアメリカ車らしいなあと感じた。
キャデラックもクラウンも、現状のトレンドを反映して排気量のダウンサイズなどを行なっているのだが、“らしさ”をどこまで残すかで方向性が違っていると感じた。つまり、時代は代わっても、キャデラックブランドというのはどういうものなのかを、CT5ではしっかり表現されていると感じたのである。
対してクラウンは、運転してみて「やっぱりクラウンだよなあ」とツボを押さえている部分が少なく感じた。この「クラウンらしさの欠如」が今日の販売苦戦に見える実績に少なからず影響しているように思う。