独自の規格の中で進化を果たし、ガラパゴス化した軽自動車
軽自動車規格は日本独特の車格であり、それによって税制や保険制度も登録車と別枠である。一方海外には軽自動車という特別枠はないので、車体寸法やエンジン排気量などに制約がない。ただし、税制での区分けなどはある。
日本の軽自動車は商品性が高く、安全性能も登録車と同等の規格で評価されている。したがって、海外へ輸出されても遜色ない商品性を持っているといえる。
一方、日本と同様に道路幅がそれほど広くない欧州であるが、速度域が日本より高く、欧州で走行するには、日本の仕様のままでは動力性能が物足りなく、また燃費の悪化などにもつながりやすい。したがって、軽自動車を製造しているメーカーから聞く声として、輸出するならエンジン排気量が800ccほどあるのが望ましいとの話もある。
アジアでは、輸出に高い関税を課す地域もあり、その場合はより高価なクルマとなってしまう。なおかつ軽自動車という制約がないのであれば、関税のかかった高額な支払いをするなら、もう少し大きなクルマのほうが快適に乗れるし、荷物も積みやすいといった要望が出るだろう。あるいは道路の舗装率によって、より最低地上高が高いほうが好ましいという考えもあるかもしれない。
クルマとしての商品性は十分にあっても、小型車としてみた場合には、地域の交通にあった動力性能や、価格に見合った大きさなど、海外の事情により適応したクルマが求められるので、日本仕様そのままで軽自動車を輸出するのは難しくなってくる。
それでも、たとえば電気自動車(EV)では、三菱i-MiEVがフランスのプジョーへOEMとして供給され、iOn(イオン)の車名で販売されたことがある。EVであれば、モーターの駆動力は低速トルクが大きいので、市街地などで利用する分には、欧州でも遜色なかったはずだ。
また、軽自動車を基に、車体やエンジン排気量を拡大して販売された例もある。ことに今日ではプラットフォームの寸法の融通性が高まっている。したがって、軽自動車そのものではなくても、その基盤技術は応用され、地域の実情に適した性能や装備で販売することにより、手ごろな価格で地元の足として活躍できるはずだ。そういう応用がきくこところが、軽自動車の性能や品質の高さとなり、日本の消費者に十分な満足をもたらすことになっているのではないだろうか。