世界的には料金メーターを作動させず料金交渉してくる場合が多い
筆者は東南アジアや中国などの新興国に出張で出かけることが多いのだが(いまは行けないけど)、その際にタクシーに乗って料金メーターを入れてもらえない国はまだまだ多い(料金メーターすら設置していない国もある)。外国人とわかるやいなや、料金メーターを入れずに片言の英語やスマホ画面に数字を打ったり、翻訳アプリを使ったりして料金交渉をしてくる。
つまり、不正なタクシー営業を当たり前のように行う国がいまだ絶えないのだ。確実に料金メーターを入れるのは、筆者の経験ではインドネシア、ベトナム、台湾ぐらいで、タイは「渋滞がひどいから」といって料金メーターを入れないほうが“良心的”とアピールしてくる。たまたまバンコクで高級ホテルに泊まり、その玄関でタクシー待ちをしていたら、ドアボーイのお兄さんが「ここにくるタクシーはまず料金メーターを入れないから、通りで拾ったほうがいいよ」と言って通りまでついてきてくれてタクシーを止め、料金メーターを入れるところまで確認して送り出してくれた。
中国ではたいてい帰国便は早朝となるので、朝早くにタクシーを呼んでもらうと、ほとんどのドライバーは料金メーターを入れずに料金交渉をしてくる。
何が言いたいかというと、日本のように制服をパリッと着込んで、清掃の行き届いた車両で、さらに確実に料金メーターを入れてくれるタクシーサービスというのは、世界的にはまだまだ珍しい部類なのだ。インドネシアやベトナムは、日本のタクシーサービスを手本としているから、しっかりと料金メーターを入れるのである。
それなのに、日本では料金メーターを無視するかのような、新たなサービスの連発に現場のドライバーのなかには違和感を覚える人も多い。
天気によって料金が変わるサービスは、まだ具体的なサービス内容までは踏み込んでいないが、最近乗り合わせたタクシードライバーは、「たとえば乗るときは天気が良かったのに、お客様を乗せているときに雷雨になったらどうするんですかね。また、たとえば雨量が何ミリ以上で、継続的にどのくらいの雨が降れば料金が高くなるなど、“客観的な運用規則”を設けてもらわないと新たなトラブルの火種になりかねないですよ」と話してくれた。
日本政府は“科学的エビデンス”や、“客観的根拠”を示すのが苦手なようで、なんでも“どんぶり勘定”で政策を進めようとするように見えるが、“どんぶり勘定体質”ともいわれるタクシー業界から、政府のどんぶり勘定ぶりを懸念する声が聞かれるのはなんとも皮肉な話である。
定期券や回数券は、いままでもヘビーユーザーだった人には便利なサービスとなって利用回数が増えるかもしれないが、「定期券や回数券ができたから」と新規需要が飛躍的に増えることは期待できないだろう。ましてや、全国的に緊急事態宣言や“まん防”下の地方自治体も多く、政府は人流抑制として出勤も控えろとしているわけで、タクシーの利用を増やそうという施策の導入には矛盾を感じる。
政府がたびたび緊急事態宣言や“まん防”を出すから、それらの出ていない地域も含めて外出自粛する人が増え、そのためタクシー需要が減ってしまっているのだから、まずは新型コロナウイルス感染拡大の収束をはかるのが最優先であり、そして経済活動が早期に全面再開されることがタクシー需要をコロナ禍前の水準まで戻す“特効薬”ではないかと考える。