トラックは理論上ハイドロプレーンを起こさない
一方、トラックやバスなどの重量が大きな車両では、タイヤ空気圧が8〜9kgf/cm²と高く設定されているので、大型トラックなどでタイヤ内圧設定が9kgf/cm²だとするとV≒189km/hとなり、理論上は動力性能内ではハイドロプレーンが起きないことになる。
ただし、この公式が有効となるには一定の条件がある。まずは「水幕の水深がタイヤの溝よりも深い場合」だ。スリックタイヤのように溝が無ければ1mmの水深でも発生要因になる。一般的なタイヤで溝深さが8mmとすれば、8mm以上の水深があるとNASAの公式が適用される。ただ、走行車両は荷重とタイヤの転動により水幕を払いのける作用があり、10mm程度の水深でも払拭効果によってタイヤ接地部では5mm程度に減少されていればハイドロプレーニングが発生しないこともある。そのためにも排水性に優れたトレッドパターンデザインが有効で、摩耗による溝の深さやタイヤ空気圧などがきちんと管理されていなければならないのだ。
高速道路でよく起こりがちなのが、大雨のなかで低速走行している大型トラックを追い越すシーンだ。大型トラックは理論的にハイドロプレーンを起こさないが、路面の水を左右に払拭する量が大きい。そのため大型トラックが走行している真横のレーンには掃き飛ばされた水が大量に溜まり、手前より水深が深くなっていることがある。それを勘案せずに普通車で安直に追い越しをかけると、場合によってはハイドロプレーンを引き起こしてスピンし、クラッシュしてしまうのだ。ひとたびハイドロプレーンが発生したら電子制御機能も効をなさないから運を天に任せることになってしまう。
ただでさえミューが低くて滑りやすいウエット路面。雨天の走行はタイヤのメンテナンスと走行速度を抑えて走ることが重要だと改めて心得てほしい。