ホンダ登録車の最大のライバルはN-BOX
つまり、残価率では大きな差はないのだが、実際の中古車販売価格では、あくまで試算したところでは、N-BOXのほうが値落ちは少ないということになる。そのため完済前に下取り査定に出すと大きな差がつく可能性が高くなるのである。つまり、残価設定ローン完済前に下取り(あるいは買い取り)に出し、下取り査定額(あるいは買い取りう査定額)で残債整理すれば、ケースによっては“お釣り”が残る可能性がより高いのがN-BOXなのである。
一度N-BOXに乗れば、そのあたりの“旨味”を知ることになるので、短期間(最長5年ほど)で新車に乗り継ぐひとは、N-BOXからN-BOXへと乗り継ぐパターンがかなり多いというのは、販売現場でよく聞く話であり、これは軽自動車では圧倒的な台数差でトップを維持するN-BOXの原動力となっている。
N-ONEやN-WGNの売れ行きについては、N-WGNは2020事業年度における月販平均台数は月販目標割れしているものの、N-ONEは新型となり初めてフルカウントとなった2020年12月から2021年3月の間での月販平均台数は月販目標をオーバーしている。N-WGNも極端に月販目標を割り込んでいるわけでもないので、外野が「N-BOXばかり売れて大変そうだ」思っているほどには、軽自動車だけに限れば販売現場も思っていないようにも見える。もともと、N-BOXがジャンジャン売れればそれでいという印象も強く受ける。
しかし、N-BOXがホンダの登録車を喰ってしまっていることについては、販売現場は頭を抱えているようである。ホンダ登録車の最大のライバルはN-BOXなのである。
2020年2月に発売となったフィットも思ったような販売実績を残していないのも、ヤリスやノートなどのライバルと言うよりは、N-BOXの存在が大きいと言えるだろう。ステップワゴン、フリード、ヴェゼルあたりからのダウンサイズニーズを、N-BOXが取り込んでしまうとも聞いたことがあるので、ホンダのラインアップ内において、N-BOXはかなり突出したモデルとなっているのは間違いない。
ただ、現状のコロナ禍では、“プチ贅沢”という表現もあるほど、行動自粛などが続くなかで、できる範囲でちょっとした贅沢をしたいという消費行動があり、新車販売でもより上級車、より上級グレードへ購入車種が集中する傾向もあるのだが、ホンダではN-BOX内でグレードアップやオプションを奢ったりすることで“プチ贅沢”が終わってしまうと、冗談半分で聞いたことがあるが、まったくの絵空事でもない様子が伝わってくる。
「他メーカーに流れてしまうよりは」と、N-BOXの販売に熱心になってしまうのもわかるが、お客ごとにしっかり売りわけることができないと、いつまでも“N-BOX頼み”が続くことになり、台数は売れるのだが、アフターメンテナンスをディーラー以外の業者に持っていかれることも多いので、ディーラーにとっては利益がなかなか出ないという体質がより定着してしまうことになってしまうだろう。
支払総額で600万円もざらとなるアルファードを年間で10万台売ってしまうトヨタは、登録車のヤリス(ヤリスクロス含む)で、N-BOXから“日本一売れているクルマ”の地位を奪った。日本一の座を、ダイハツ・タントや、スズキ・スペーシアといった軽自動車ではなく、ヤリスという“登録車”で奪われてしまったホンダのショックは相当なものだったと思われる。