日本の軽自動車にも走ることだけを追求して作られたモデルが存在
3)モーガン
3台目は、見た目も乗り味もクラシカルなところがたまらない、モーガン。創業は1909年というイギリスの老舗メーカーが、戦前から基本構造を変えずに作り続けている唯一のクルマで、なんとフロアは木の板。そこにアルミを貼って強度を出しているのですが、現代のガチガチに剛性のあるフロアを使っているクルマとはまったく違う世界観があるのが、モーガンの大きな魅力でしょう。
現在、1950年にデビューしてからモーガンの屋台骨を支え、支持されてきた「Plus4」の6速MT/8速ATモデルと、「Plus6」の8速ATモデルをラインアップ。メーターパネルをはじめとするインテリアもクラシカルな雰囲気で仕立てられており、タイムスリップしたかのような気分に浸れます。ただし、BMW製のツインパワーエンジンが生み出す加速は、0-100km/hが4.2秒となかなかの速さ。刺激的な走りも楽しめる1台です。
4)ホンダS660
4台目は、軽自動車として唯一、走ることだけを追求して作られたモデルだと言えるのが、ホンダS660です。スーパーカーの縮尺をギュッと小さくしたかのような、世界最小のミドシップ・オープンスポーツカーとして多くのファンに愛されてきました。わずか660ccのターボエンジンとは思えない、軽やかな吹き上がりと身のこなしは、F1からのフィードバックも取り入れながら、地道に突き詰めてきたからこそ。ホンダだから実現できた乗り味だと言ってもいいでしょう。
収納スペースは大根1本が入る程度しかなく、手動で取り外しができる幌を丸めて入れたら、あとは何も入らない小ささ。だからこそ、ボディは小さくても、大人がひとりで心ゆくまで走ることと向き合い、豊かな時間が過ごせるクルマに仕上がっているのだと思います。残念ながら、2022年3月で生産終了がアナウンスされてしまいました。気になっている人は、どうぞお早めに。
ということで、一生に一度は乗ってほしい、人生観が変わるクルマたちをご紹介しました。私たちはどうしても、クルマを買うとなると「いかに室内が広くて快適か」「荷物がたくさん積めるか」「コストパフォーマンスはいいか」なんてところを気にしてしまいがちですよね。でも、今とは別の人生に憧れたり、今の自分を本気で変えたいと思ったときには、一度すべての便利さを捨ててみる、というのもいいのかもしれません。ここでご紹介したクルマたちなら、捨てたものよりも尊く、本当に自分に必要な何かを教えてくれるような気がします。