ドラテクだけじゃ一流になれない! いまどきのレーシングドライバーに課せられた「凄まじい」仕事量 (2/2ページ)

F1マシンならほんのわずかな違いもタイムに大きく響く

 ドライバーがアンダーステアを感じやすいのはターンインだ。ガスリー選手がタンブレロシケインでのアプローチでアンダーステアを感じているのだとしたら、それはフロントタイヤの熱入れが不十分であったり、あるいはガスリー選手のスキルにマシン性能が追いついていないと理解することができる。

 同様に角田選手はターンインは満足していてタンブレロシケインからの出口でオーバーステアを感じているとしたら、それはパワーオン時にテールスライドを起こしているとか、シケインの右左の姿勢変化でヨーダンピングを引き起こしているなどの可能性が考えられる。ルーキーの角田選手がガスリー選手ほどのターンインでの鋭い突っ込みを発揮できていなければ、立ち上がりでタイムを稼ごうとしてスロットルを早めに開けてしまうこともあるだろう。

 近年のF1マシンなら十分なロガーデータを分析することで、両者の速度や操作、マシンの姿勢やタイヤ温度、タイヤ空気圧、ダウンフォースバランスにブレーキ温度バランスまでわかり比較できる。もちろんスロットル操作やブレーキ、ステアリング操舵角速度も解析できるから、エンジニアにとっては分析に必要なデータは揃っている。

 問題はいつ、どのようなタイミングで、どんな操作をしたときに「アンダーやオーバー」を感じ、それはどの程度ラップタイムに影響しているかを突き詰めていかなければならないことだ。レーシングドライバーからのさまざまなフィードバックをもとに、ひとつひとつセットアップを詰めていって、1周でコンマ1秒でも速く走ろうとチーム全体で努力していく。

 近代モータースポーツの頂点であるF1では「ドライバーはアンダーかオーバーかだけを報告したらいいんや」という次元では勝負にならなくなっている。引き続き今シーズンの角田選手の走りと、彼が発するフィードバックコメントにも注視していくと、その成長の過程が読み解けて面白さも増すはずだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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