モーターパワーとCVTの組み合わせが絶妙!
運転席に戻って走り始めてみよう。e:HEVはエンジンで発電しモーターで駆動するシリーズモード、エンジンだけで走行するモードの2パターンで構成される。発進から巡航まで通常はモーターのみで走行するEVとして走るが、バッテリー容量はさほど大きくないので充電料が不足してくるとエンジンを始動させ、発電用ジュネレーターを回しモーターを駆動させるハイブリッドとなる。
ここまではエンジンと駆動輪はクラッチで切り離されており、駆動力はすべて電動モーターから供給されるのだ。高速道路の巡航などエンジンで走行したほうが効率がよい場面ではエンジンと駆動輪がクラッチで繋がれ、電動モーターは逆に電気的に切り離される。ただ減速場面になるとエンジンと車輪間のクラッチは切られ、モーターが回生することで減速エネルギーを回生する仕組みだ。
発進加速を強めにして確かめると、エンジンが高回転に吹き上がり、ある回転域になるとギアシフトアップしたように回転が落ち、また上昇していく変速ステップ比が刻まれているようなエンジン回転状態を示した。100km/hくらいまでは3段階に変速比が変わるようにエンジン回転が上下するが、じつはこれ、変速ステップを擬似的に演出しているものなのだ。
e:HEVには電気式CVTと呼ばれる変速システムが備わっているが、電気式CVTは一般的なトランスミッションのCVTのようなメカニズムを持っていない。1万3300回転まで回るという強力な駆動モーターの回転数と供給電力により、無段階変速のような駆動力制御を可能としているもので、その制御を称して電気式CVTと呼んでいる。高速巡航でガソリンエンジンがクラッチで駆動輪と繋がったときは電気式CVTは機能せず、リダクションギヤが機械的にエンジンと駆動輪の回転数を決めているにすぎない。
加速、減速、巡航など走行シーンに応じて、このようにパワートレインのなかで電気的に、あるいは機械的にさまざまな制御が行われていてe:HEVの走りを決定しているというわけだ。その複雑な制御を如何にドライバーに違和感を感じさせずにこなすのか、制御ロジックのキャリブレーションには多くの時間と労力が注ぎ込まれたことだろう。
ノーマル、スポーツ、ECONと3つあるドライブモードそれぞれを明確にキャラクタライズし、走行シーンに応じて適合性を高めていることからもe:HEVの成熟度の高さを知る事ができた。ただシフトレバーのDからBモードやステアリングパドルによる減速強度選択など、システムを意のままに使いこなすには慣れる時間とシステムの仕組みを理解する必要がありそうだ。
進化したホンダ・センシングの機能性や実用性を増したホンダ・コネクトなど装備面の充実度はクラスを超えるレベルで成熟され、商品価値を大きく高めている。すでに販売面も好調に推移しているようで、前評判以上に新型ヴェゼルの魅力を実車から見出だすことができたのだった。