令和時代に若手セールスマンの「ビニールレザー」発言に衝撃! 日本車独特の「シート表皮」の歴史 (2/2ページ)

かつて本革シートを採用する日本車は少数派だった

 2020事業年度に年間販売台数で10万台強を売ったトヨタ・アルファードでは、廉価グレードのみはファブリック地を採用し、エグゼクティブラウンジは本革となり、売れ筋のSCパッケージは合成皮革となっている。アルファードでファブリック地を選ぼうものなら、将来下取り査定ではマイナスポイントになるとの話も聞いている。

 納期遅延が続いているトヨタ・ハリアーでも、最上級グレードのレザーパッケージが人気となり、とくにこの仕様を選ぶと納期がさらにかかるとのこと。

 そもそも日本は、シート表皮でも“ガラパゴス現象”といってもいい傾向が続いていた。欧米や、アジア地域を見渡しても本革(あるいは合成皮革)シートが好まれてきたのに対し、日本ではファブリック地が好まれ、高級車でも“ベロア地”など高級織物をシート表皮に採用することが多く、本革シートは少数派であった。

 2001年に韓国ヒュンダイ自動車が日本市場に参入してきた時、カローラと同クラスのエラントラというモデルの試乗車が本革シートを採用して驚いたのを覚えている。韓国では圧倒的に本革シートが支持されているとのことで、カローラクラスであっても設定されることは珍しくないとのこと。いまはグローバル化し、クルマのパーツや用品も世界調達して自動車生産が行われているのでだいぶ変わってきたが、過去にはアメリカ車、イギリス車、ドイツ車、フランス車など、国によってレザーシートの臭いが違っていた。ドイツ車は“酸っぱい”臭いがし、フランス車は甘い臭いが車内に充満していたのをいまも覚えている(あくまで筆者の感想です)。

 技術革新が進み、コストダウンとともに合成皮革といってもさまざまなタイプが選べるようになってきたことも、日本車で本革シートだけでなく、合成皮革シートの設定が目立つようになってきたようである。

 前述したように、筆者に“ビニールレザー”と説明したセールスマンは悪意があってそのように説明したわけではない。ただ筆者のような“オジさん”世代には、ビニールレザーという響きに悪い印象を持つ人もいるから、「合成皮革といったほうがいいよ」とアドバイスしてショールームを後にした。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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