「藤井風」「King Gnu」「Suchmos」ヴェゼルのCM曲のアーティストがその後「売れるワケ」を「仕掛け人」に聞いた (2/2ページ)

「次のスタンダードになりうる人」を選んでいる

 新型ヴェゼルのHonda All-New VEZEL e:HEV 新TVCMは、映像の常識外の魅力、完成度が際立つとともに、その画曲として使われたアーティスト、藤井 風が新型ヴェゼルのために書き下ろした、「きらり」もまた、TV CM公開以来、大ヒット中であることは周知の通りだが、ホンダの宣伝企画課と広告代理店で議論を重ねた新型ヴェゼルのTV CM曲を担当するアーティストの選定は、なんと2019年末から始まり、新型ヴェゼルの発売1年前の2020年3月にほぼ決定していたという。

 では、藤井 風には、書下ろし曲について、どんなリクエストをしたのだろうか。それは意外なほどシンプルだったそうだ。「GOOD GROOVE」というテーマを投げ、まだ現車もない段階ゆえ、ビデオコンテを見せただけだという。

 そしていよいよ、2021年4月22日から、現在注目のミュージシャン、藤井 風のCM楽曲としては初となる「きらり」が流れるTV CMが放映開始。ちなみにその「きらり」の楽曲リリースは5月3日。つまり、TV CMの楽曲公開が先なのである。ホンダの、ヴェゼルの狙い、藤井 風 起用が見事に成功したと言えるのは、新型ヴェゼルの絶好調な売れ行きだけではない。

「きらり」がリリースされた2021年5月3日から5月9日の1週間のBillboard JAPANダウンロードソングチャート“Download Songs”では、「きらり」が3万8418ダウンロードで、初登場1位をマークしたのである。それは、3月に「旅路」が同チャートで1位を獲得してからわずか2カ月後の快挙と言ってよく、アーティストの力はもちろんのこと、TV CMから耳に届いた影響も計り知れないと言っていいだろう。

 ところで、TV CMで使われる曲が、耳さわりのいい過去のヒット曲、定番曲から採用されることが多い中で、ホンダ・ヴェゼルのTV CMは、その時点で、何故、まだメジャーに上り詰めていないアーティストをあえて採用するのだろうか。

 ヴェゼルの宣伝を担当する本田技研工業宣伝部の野口さんによれば、ヴェゼルは次のスタンダードを目指すクルマであり、CM楽曲を担当するアーティストも、次のスタンダードになりうる人をいち早く選んでいるのだという。それはSTAY TUNEと808のSuchmos、Do Well のSIRUP、小さな惑星のKing Gnu、HONDAのFriday Night Plansも同様である。

 TVに背を向けていても、思わず振り向いてしまうような楽曲と映像が流れるTV CMの効果は絶大だ。ヴェゼルファンはもちろん、今回は藤井 風ファン、そしてこのCMで始めて新型ヴェゼルと楽曲、映像を通じて出会い、その世界に共感し、新たな発見をした人たちが、大挙、ホンダディーラーに来訪し、購入に結びついているのだという。

 新型ヴェゼルのTV CMの映像について、ちょっとだけ触れておくと、登場する新型ヴェゼルは2台。そのナンバープレートは、1台が「か・221」。221とは、フ・ジ・イを表し、もう1台のヴェゼルの(こちらのナンバープレートはほとんど目に入らないが)ナンバープレートは「ぜ・221」。2台合わせて、フ・ジ・イ・カ・ゼ(藤井 風)と読めるのだから、遊び心満点、凝っている。藤井 風ファンなら、希望ナンバー「・221」に殺到するんじゃないだろうか!!

 また、TV CMの映像に注目すれば、プロ機材で撮った画像ではないように見えて当然だ。聞けば、ティザームービーのコンセプトでもある「Co-Creation」を継続し、新型ヴェゼルの魅力を伝えるアンバサダーとして、さまざまな国籍や年齢、バックボーンを持つ、井浦新、玉城ティナ、布川敏和、アントニーといった各界で活躍する人たちで結成された“GOOD GROOVER”たちの(犬含む)、それぞれの個性的な映し方が光る、スマートフォンやインスタントカメラによる動画、画像、さらには懐かしい8ミリカメラを用いた撮影動画が使われているのである。楽曲、アーティストだけでなく、CMの出演者、映像の世界にまで、こだわりまくっているのが、新型ヴェゼルのTV CMというわけだ。

 個人的に、ヴェゼルのCM曲がヒットする理由、そのアーティストがメジャーになる理由を想像してみると、

1)そもそもホンダ側の次世代アーティストの目の付け所がよい
2)そもそも楽曲のセレクトがよい(書き下ろしは除く)
3)TV、ラジオ、ネットでの展開で、アーティストのファン以外の人の耳に届く機会が劇的に増え、ファン以外にも拡散、新たなファンが増える
4)映像とのマッチングの良さなどのCMとしての完成度、斬新さからくる好感度

 ……といった総合力によるものだと感じる。

 では、最後に新型ヴェゼルe:HEVブランドムービー、見ごたえあるフルバージョン (4分17秒)をご覧いただこう。新型ヴェゼルのカッコ良さ、魅力、そのネクストゼネレーションに向けたイメージを縦横無尽に引き出す「きらり」の楽曲はもちろん、登場人物、映し方、「か・221」のナンバープレートにも注目である。楽曲のノリの良さ、常識はずれの映像の面白さから、思わず新型ヴェゼルが欲しくなるんじゃないだろうか!? そして、ホンダの日本本部 商品ブランド部 宣伝企画課 野口拓真チーフが仕掛けるこれからのホンダのCM楽曲にも注目である。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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