那須高原の「泊まれる発電所」でホンダeの「すごさ」を体験
電気自動車、いわゆるピュアEVは、100%電気で走るクルマとしてだけでなく、万一の災害時に電源車として機能することは、周知のとおり。東日本大震災の際も、日本中のHVやPHEV、EVが東北に駆けつけ、停電した町や村に灯りを灯したことでも知られ、それは今なお、語り継がれている逸話である。
今回、ホンダ初の量産ピュアEV、RRレイアウトの街中ベストな、都市型コミューターとして適切な35.5kWh、1充電走行距離をWLTCモードで283km(アドバンスグレード)のEVスペックを持つホンダeを使ったV2H(vehicle to home)、V2L(vehicle to load)体験を、太陽光発電、Looopでんき、EVのある暮らしの推進でも知られる企業「Looop」とのコラボレーションによって実体験することに。
舞台はLooopの那須高原プロジェクトのひとつでもある、那須高原の森の中につくられた、太陽光発電所を兼ねた”泊まれる発電所”と呼べる宿泊施設、Looop Resort NASU。
今回の取材では、夜は那須牛や地元野菜の鉄板焼き、翌朝はホットサンド……それに使う電気をすべてホンダeでまかなうというのだから、美味しいものに惹かれて……おっと、そうではなく、日常はもちろん、災害時にも建物に給電でき、つながる電気自動車の安心(V2H)、機器の電源となり、いつでもどこでも蓄積した電力を外部に供給できる備え(V2L)について深く知るべく、実際にホンダeを電源とした1泊2日のイベントに出向いたというわけだ。
Looop Resort NASUに到着したWEB CARTOP取材班はまず、Looop Resort NASUの施設をチェック。そこは、主施設となるリビング&ダイニング&フルキッチンとテラスを完備したホール棟のほか、2棟のコテージ(A/B。Aはシャワー&トイレ、Bはトイレ付き。いずれもエコのためエアコンなし)、独立したバスルーム棟の4棟で構成され、すべての建物の屋根と敷地内に多数の太陽光発電パネルが設置されている。それも、非効率であるのを承知で、光を通すパネルを採用。つまり、テラスなどの下でも、暗くならない配慮がなされている。つまり、太陽エネルギーを大屋根で発電し、その下に大きな軒下空間を作る、 人と自然のソーラーシェアリングというわけだ。
ホール棟、A/B棟のリビングフロアには床暖房が設置され、この日の最低気温が0度近いとはいえ、初春の那須高原に降り注ぐ太陽のおかげもあって、部屋のなかでは寒さなどまったく感じない。
ちなみにLooop Resort NASUで太陽光発電された電力は、そのまま施設で使われるわけではない。施設で使う電力より圧倒的に多くの電力(一般家庭50世帯分)を発電できるため、一度電力を売り、そこから電気を買っているそうだ。
到着してしばらくすると、いよいよV2Hの体験である。スタッフがLooop Resort NASUの外部からの電力を、ブレーカーを落として遮断。つまり災害時を想定して、意図的に停電を引き起こしたのである。もちろん、外には太陽光パネルが屋根となった、200V普通充電器、V2H機器が設置された駐車スペースにホンダeが満充電状態でスタンバイ。実際にV2Hの作業を進める。手順は以下のとおりだ。
① ホンダeの電源OFF状態で、12V(シガーソケット)コンセントとV2H機器を1本のコードで接続。
② ホンダeの電源をON。起動させる。
③ 自動的にV2H機器の電源が入る。
④ V2H機器とCHAdeMO規格対応のホンダeのボンネット内にある充電/給電ポートをコネクターで接続。
⑤ そしてV2H機器の放電ボタンを押すだけ……。
手間はわずか数分。その瞬間、Looop Resort NASUの部屋に煌々と明かりか灯ったのである。今は平時だが、災害時の停電中なら、拍手モノではないだろうか。
ちなみに、ニチコン製のV2H機器、EVパワーステーションはスタンダード(工事費込み約60万円/補助金あり)とプレミアムモデル(工事費込み約100万円/補助金あり)があり、ここに設置されていたのは後者。AC出力電力は6kW未満とされている。そんなEVパワーステーションによって、ホンダeから供給される6kW未満の電力を、家庭内、ここではLooop Resort NASUの部屋で使うことができるようになる。
細かいことを言えば、EVパワーステーションのスタンダードモデルは30Aでブレーカー2回路のみ使用可。プレミアムモデルは余裕の60Aでブレーカーの全回路を使用できるという。