ミニバンユーザーのダウンサイズ化が進んでいる
前出のように、フリードとシエンタの2016事業年度締め年間販売台数を100%にして、2020事業年度締め年間販売台数を比較すると、フリードは約97%、シエンタは約53%となった。フリードは明らかにステップワゴンより調子が良いのがわかる。ホンダユーザーのなかでは、早いうちからステップワゴンやオデッセイなどの大型ミニバンからのダウンサイズが目立っており、それらからのフリードまたは極端な話ではN-BOXへのダウンサイズが、いまでは定番化しているのが大きいようだ。
シエンタは2020事業年度締めでは調子が悪かったように見える。近年シエンタは2列シート仕様がタクシー仕様として人気が高まっていたのだが、コロナ禍でタクシー車両の入れ替えが延期されたりしたことが影響の一つと考えられる。ノア系だけでなく、シエンタも、アルファードに食われたことが影響しているようだ。海外への中古車輸出でも人気の高いアルファードはリセールバリューがかなり良い。
アルファードは4月末に改良を行っているのだが、改良前に聞いた話では430万円ほどする特別仕様車のSタイプゴールドで、5年後の残価設定ローンを組むと、支払い最終回に据え置く5年後の残価相当額が200万円となり、月々の支払い額がヴォクシーのそれに数千円足すだけで乗ることができ、ヴォクシー希望のお客のほとんどがアルファードへ流れたこともあり、アルファードは年間販売台数10万台強を販売した。シエンタを希望していたお客の一部もアルファードへ流れたと考えていいだろう。
ダウンサイズニーズがミドルクラスミニバンの販売苦戦を招いているというのと、整合性がないではないかということになるが、アルファードの最上級グレードであるエグゼクティブラウンジの存在がクローズアップされるあまり、「アルファードは予算的に買えるわけがない」と思っていたのに、ローンを組めばヴォクシーにちょい足しで乗れるというインパクトはあまりにも大きかったようである。
コロナ禍になってから、新車購入においても明らかに購買行動は変わってきている。“プチ贅沢”とも呼ばれる消費意識も手伝い、コロナ禍前ではダウンサイズニーズが、そしてコロナ禍では上級車種のアルファードへミドルクラスミニバンユーザーが流れる傾向が、とくにノア系ユーザーの中で高まったのである。
年末にもモデルチェンジが行われるとされているノア系は、エスクァイアを廃止して、さらに3ナンバーサイズになるといわれている。一般的に考えれば、3ナンバー化されると、シエンタやフリードへ流れるユーザーが目立ちそうだが、コロナ禍という非常時だからこそ、「同じ3ナンバーであり、なおかつチョイ足しで乗れるなら」と、アルファードへ流れる動きが、さらに顕在化する可能性は十分高いといえよう。