ゼロエミッション化を進めることは経営的にもプラスに働く
実際、FCAとPSAがいっしょになって生まれた巨大グループ「ステランティス」は、これまで多額のクレジットを購入せざるを得なかった。
しかし、FIAT500を電気自動車としてフルモデルチェンジ、プジョーやシトロエンではプラグイン車を増やしている。そうした電動化のおかげで、3億ユーロ(約400億円)のクレジットを買わずに済むようになるという。
クレジットの購入は、ある意味で罰金的な位置付けであり、企業としては利益につながる投資ではない。事業を継続するために仕方なく払う経費といえる。であるからこそ、電動化を進めてクレジットの購入を減らし、ともすればクレジットを売れる立場になりたいと考えるのは自然だ。つまり、先んじてゼロエミッション化を進めることは経営的にもインセンティブがあるといえるのだ。
この流れはもはや止まることはないだろう。
予想される未来は、温暖化ガス排出の大きな原因となっている原油の使用量を減らすという社会だ。世界的にいうと発電は再生可能エネルギーの比率が高まり、火力発電は減っていく。いずれにしても、化石燃料の採掘量は大幅に減っていく。
一方で、ガソリンを使わない電気自動車が増えていけば、ガソリンのニーズが減り、ガソリンスタンドの経営も成り立たなくなっていく。そうなると、給油インフラが減っていく。つまり、エンジン車は利便性という点でも電気自動車に劣るように感じられることになる。
そして、世界中の自動車メーカーがフル電動化に進めば進むほど、ガソリンスタンドが減り、使い勝手の面からエンジン車よりも電気自動車のほうをユーザーが選ぶ時代になる。現在は、そうした変化が加速している時代といえる。
そうした未来が予想されるからこそ、ホンダやGMといったスケールの自動車メーカーであっても明確な目標を決めてゼロエミッション化を進めると判断をすることが妥当になってくるのだ。