BMW i8は使命を終えた
「プロジェクトi」がまず考えたのは、EV向けの電池の確保だ。「MINI E」では、当時は”いわゆるパソコン用の電池”と呼ばれた、直径18cm×高さ65cmの円筒形リチウムイオン二次電池「18650」を大量に採用した。
この手法は、テスラと同じだ。なぜならば、前述の米ベンチャー企業はテスラ向けに18650を使ったEV設計の基盤技術を自社のパテントとしてテスラに提供していたからだ。
その上で、2010年代前半にBMWが出した将来の電動車事業戦略では、ドイツのボッシュと韓国のサムスン電池が協業した設立した大型リチウムイオン二次電池の設計・製造企業をタッグを組むことだった。
そうした経緯を現場で見てきた筆者が、2010年代前半にミュンヘンで開催されたEV関連シンポジウムで目にしたのは、「BMW i」というブランドネームであった。
当時、BMW iの開発担当者らは「EVプラットフォーム化を進めることが重要だ」としながらも「当面は、レンジエクステンダーやプラグインハイブリッド車を併用し、iをシリーズ化していく」と語っていた。それが「i3」と「i8」である。
だが、ボッシュとサムスンの合弁企業はさまざまな理由で企業そのものが消滅という結末となるなど、プロジェクトiが目指した当初の計画は大きく軌道修正する必要が出てきた。
一方で、欧州でのCO2規制強化に動きが活発化し、また中国政府のEV施策でも2010年代中盤になり大きな軌道修正があった。
そうした時代の流れのなかで、「i8」は事実上、孤立してしまったといえる。キレイごとでまとめるならば「i8は、その使命を終えた」と表現するべきだろうか。筆者の実体験を踏まえて、i8に対する”送る言葉”としたい。