芸術か? イロモノか? 存在したのがウソみたいな「強烈個性」の絶版車4選 (2/2ページ)

SUVとステーションワゴンのクロスオーバーという意欲作も

3)日産ラシーン

 あまりに個性が強烈すぎたゆえ、後継車を生み出すことができなかったモデルとして思い出すクルマに日産ラシーンがある。1993年の東京モーターショーに出展され、翌1994年12月に量産が始まったSUVとステーションワゴンのクロスオーバーモデルだ。

 レトロとポップがクロスオーバーしたルックスは、とにかくユニーク。生産を担当したのがBe-1などの生産で知られた高田工業ということもあり、パイクカー的なキャラとして捉えられることもあるが、2000年半ばまでと5年半ほど生産されたことを考えるとパイクカーではなく、完全なレギュラーモデルといえる。

 メカニズムとしては当時のサニー(B13系)をベースとしているためSUV的なのはルックスだけでクロカン性能はさほど期待できないが、それでも全車4WDという設定は意欲的で、その独特なルックスもあいまってコアなファンも多く、専門店も存在する。近年では「ゆるキャン△」に登場したことで人気が再燃したことでも知られている。

4)マツダ・オートザムAZ-1

 ラシーンが東京モーターショーでお披露目される前年、1992年秋に市販化されたマイクロスポーツカーが、マツダ「オートザムAZ-1」である。外板は応力を受けないスケルトンモノコックシャシのミッドシップにスズキ製3気筒ターボ「F6A」を搭載したガルウイングドアの軽自動車だ。

 ガルウイングドアにした理由は、前述のスケルトンモノコックシャシが、それ単体で走れるほど剛性があり、そのためサイドシルが常識外れなほど高かったため。上から乗り込むようにするガルウイングドアにしなければ乗降性が確保できなかったのだ。

 そのドアは屋根にあたる部分までガラス製となっていたが、基本的には固定されており、チケットの受け渡しくらいにしか使えない小さな窓が用意された(開閉はハンドレギュレーター式)。もちろんトランクに当たるスペースは皆無で、実用性などまったく考慮していないピュアスポーツカーだった。

 事実、軽自動車としてはリミッターを解除すればエンジンノーマル状態でも180km/hを超えることのできる唯一のモデルといえ、そのポテンシャルの高さは、平成のABCトリオと呼ばれた軽自動車の2シーターモデル(ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ)と比べても群を抜いていた。もっともフロント軸重の軽さによる安定感のなさはドライバーを選ぶほど難しいものではあったが……。

 それほどクセの強いマシンゆえに実売では5000台にも達せず、後継モデルの話は噂レベルでも流れることがない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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