この記事をまとめると
■JAF公認モータースポーツ「オートテスト」にはバック走行と車庫入れがある
■バック走行が上手な人は後輪の動きが頭で予測できて手に的確な指令を出すことができる
■バック走行を上達させたいなら思った角度にパッと手が動くような感覚を磨くことが重要
オートテストでは「バックを制する者が競技を制する」
突然ですがあなたは、手のひらに長傘を垂直に立てて、そのまま数秒間でもバランスを取って倒さないように保つことができますか? 長傘じゃくても、細長いものならゴボウでも1mものさしでもなんでも試せるのですが、やってみると予想以上に難しいと思います。
じつは、これがうまくできる人ほど、クルマの運転で難しいとされているバック走行や、バックでの車庫入れが上手にできる可能性があるのです。
「いったいなんの関係が?」と思いましたよね。でも、長傘を手の上で立たせることと、クルマをバックで操ること。これには同じようなバランス感覚と、先を読む想像力が必要となるためなのです。
その理由は後ほど解説しますが、皆さんはJAFが2015年から公認モータースポーツとして開催をスタートした「オートテスト」をご存知ですか? モータースポーツライセンスやレーシングスーツ、ヘルメットといった特別な装備は不要で、普段乗っているマイカーで誰でも気軽に参加できるとあって、全国各地でじわじわと盛り上がりを見せている、いわばモータースポーツの登竜門と言える競技です。
1名までなら助手席に同乗者を乗せたまま競技に参加できるので、親子やカップル、友だち同士で参加する姿もあるくらい、和気藹々とした雰囲気なのですが、実際に体験した人から話を聞くと、一様に「面白い! でも悔しい! もっと運転が上手くなりたい!」といった声が聞かれます。その大きな理由が、モータースポーツでは唯一と言っていい「バック走行」の区間と、「バックでの車庫入れ」がコースに組み込まれており、そこでミスを連発してしまうようなのです。
手軽に参加できるとはいえ、あくまでタイムを競うスポーツ。前に進むだけではタイムの差が出にくいところを、バックをする際にも速さと運転の正確さが求められることで、闘争心をくすぐるような絶妙な面白さが加わっています。オートテストはもともと、イギリス発祥の伝統的なモータースポーツなのですが、まさに「バックを制する者が競技を制する」と言えるでしょう。それくらい、クルマを操るなかで、バックは重要な鍵を握っているとも言えます。
では、なぜクルマをバックで走らせるのは難しいのでしょうか。その答えが、先ほどの長傘の話にもつながるのですが、長傘のグリップ部分を手で握っている時には、傘の向きを変えることも、ぐるぐると回すことも、誰でも簡単にできると思います。それは、長傘のグリップ部分が、傘全体の向きや動きを決定できるように作られているからですね。クルマもそうです。