トヨタならではの販売戦略がうまくハマった形になっている
2)全店全車種取り扱い
ヤリスの販売が好調な2つ目の理由は、2020年にトヨタの全店が全車を扱う体制に移行したことだ。全車を約4600店舗が販売するから、人気車は売れ行きを伸ばす。逆に不人気車は、需要と販売力を人気車に奪われて一層売れなくなる。
前述の4位にルーミー、5位にアルファードが入ったのも、全店が全車を扱う効果だ。ルーミーは全店扱いになって姉妹車のタンクを廃止したから、需要が集中して売れ行きが大幅に伸びた。
アルファードもヴェルファイアの需要を奪って登録台数を増やした。その結果、ヴェルファイアは2021年1〜3月の1か月平均が約1060台(アルファードの9%)に留まり、先の改良でグレードを削った。現時点で選べるヴェルファイアは、特別仕様車のゴールデンアイズIIのみだ。
話をヤリスに戻すと、発売された2020年2月にはネッツ店の専売(約1450店舗)だったが、2020年5月の体制変更で4600店舗に増えたため、登録台数を大幅に増やした。
3)低価格グレードの設定
3つ目の理由は、トヨタが法人営業やレンタカーに強く、ヤリスがそれに合わせた低価格グレードを用意することだ。エンジンは直列3気筒1.5リッターのハイブリッドとノーマルタイプに加えて、ヤリスでは1リッターノーマルタイプも選べる。1リッターの価格は1.5リッターよりも14万3000円安く、最廉価の1.0X・Bパッケージは139万5000円だ。
X・Bパッケージは安全装備の衝突被害軽減ブレーキを省いた仕様だから推奨できないが、価格が140万円以下のコンパクトカーは、パッソ&ブーンと日産マーチ程度しかない。これも注目点のひとつに含まれる。
販売店によると「買い物など街なかの走行が中心の場合、一般のお客様でも1リッターで装備を充実させたGを選ぶことがある」とのことで、廉価版と見られやすい1リッターのグレードも需要を支えている。
4)商品的な魅力
好調に売れる4つ目の理由は、ヤリスの商品的な魅力だ。ヤリスクロスも含めて衝突被害軽減ブレーキの機能が優れ、右左折時にも直進車両や横断歩道上の歩行者を検知して、衝突の危険が生じたときはブレーキを作動させる。
またヤリスハイブリッドのWLTCモード燃費は35.4〜36.0km/Lだから、日本で購入可能な乗用車では、燃費数値が最も優れている。以上のような多岐にわたる特徴により、ヤリスシリーズは好調に売れている。