クルマが「売れなくなる」可能性があるのに参入の謎! トヨタが「カーシェア」を行うワケ (2/2ページ)

気軽に乗ってもらうことで新車を買ってもらえるかもしれない

 しかも、カーシェアリングユーザーのなかには、「ここまで利用頻度が多いならクルマを所有してみようかな」と、新車購入を検討するひとも出てくることがあるそうだ。つまり、大きな視野で見ればカーシェアリングはクルマの販売促進ツールのひとつともいえるのである。

 クルマを持つことはさまざまな面倒なことが付随してくるが、1年365日、1日24時間、好きなときに好きな場所へ移動することができる、移動の完全自由を獲得することができる。カーシェアリングでは、予約が必要であるし、たまたま乗りたい時間にほかの人が利用している可能性もあり、必ずしも好きな時間に好きな場所へ移動できる自由は保障されないのである。

 生臭い話として、事情通は「あるカーシェアリング会社では、シェアリングに使う車両をまとめ買いすることで、台当たりでは一般の新車購入では信じられないほどの安値で仕入れているとされています。自動車メーカーとしては、軽自動車やコンパクトカーは薄利多売なので、工場稼働率を維持して量産を続けなければなりません。そのため通常のレンタカーなども含めたフリート販売(量販)も積極的に行っております。自社と関係のない会社へたたき売りするぐらいなら、というのもあって自前のカーシェアリングサービスを始めたというのもあるのではないでしょうか」と語ってくれた。

 トヨタは個人カーリースとなるKINTOも展開している。これは、若い世代のクルマ所有の大きな障壁の代表となる、高い任意保険料なども含むオールインワンとなる(あとは駐車場代やガソリン代ぐらい)。月々のリース料金を払うだけで新車に乗ることができ、販売現場では若い世代なら明らかにローンを組んで購入するより、月々の支払い額はお得とのことである。これも、「買えない(買わない)なら貸してあげよう」というものであり、カーシェアリングより一歩踏み込んだものといってもいいだろう。

 バブル経済のころなら、「男はクルマに興味持って当たり前」ともいわれたが、いまは男性だろうが、女性だろうが、若ければ若いほどクルマへの夢だけでなく、興味すらない。そのような世代に向けて、「新車を売っています」だけでは、そのようなひとたちに接触することすらままならなくなっている。

 とりあえずクルマに触って、乗って、使ってもらう環境作りのひとつをカーシェアリングが担っており、それを自動車メーカー自体が展開していれば、サービスを通じて新車の販売促進活動も可能であり、さらに自社車両の購入にダイレクトに持っていくこともできるので、じつは新車販売にも非常に有効なものであるともいえるのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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