トヨタは時代にあったモビリティ社会のためにカーシェアを展開
コロナ禍前には、“シェアリング社会”という言葉が頻繁にもてはやされた。個人がさまざまなものを個別に所有するのではなく、会員などを募って共同利用しようという動きである。コロナ禍となってからは、ウイルス感染を気にしてシェアリングに抵抗を示すひとも出てきたのか、コロナ禍前ほどは勢いがないように見える。
カーシェアリングも“シェアリング社会”がもてはやされるなか利用が増えたサービスのひとつ。新車・中古車に限らず、クルマを所有するには任意保険料、駐車場代、点検整備費用など、さまざまなコストが発生し、若い世代はそのような面倒くさいものを嫌う傾向があるようだ。
オジさんまっしぐらの筆者のような世代では、社会人になったらまずは自分のクルマを持つのは当たり前であった。いまの若い世代のように、軽自動車やレンタカーでデートにでも誘おうものなら、たちまちフラれた世代でもある。単に所有するだけでなく、ブランドにも相当のこだわりを持たなければならなかった。
カーシェアリングについては、日本ではカーシェアリング型レンタカーともいわれるように、レンタカーのひとつのサービスに区分されるので、シェアリングに使われる車両は「わ」ナンバーとなり、レンタカーサービスを運営している会社がシェアリングサービスを行っていたりするが、ほかにもコインパーキングを展開する会社なども参入していたりしている。
そのなか、2019年10月にトヨタがトヨタシェアと命名したカーシェアリングサービスを開始した。なお、トヨタシェアのサービス開始と同時に、完全無人での貸渡となるレンタカーの新しいサービスとしてチョクノリもスタートさせている。
「自動車メーカーであり、新車を売っていかなければならないトヨタがなぜカーシェアリングを始めるの?」と思うひともいるかもしれない。トヨタはトヨタシェアスタートを知らせるリリース上で、「『保有』から『利活用』へと、クルマに対する多様化するお客さまのニーズに寄り添えるよう、トヨタはさまざまな移動サービスを提供していきたいと考えている」としている。
いまどきの若い世代の感覚からすれば、税金や保険料を払い、車検などのメンテナンス費用もかかり、場合によっては駐車場代まで負担してクルマを所有するのは、ライフスタイルからすると「そんなのありえない」とするひとが大半だろう。無駄を極力省きスマートに生きるのが若い世代の心情ともいわれている。若い世代といっても単身者だけでなく、小さい子どものいるヤングファミリーも、価値観は同じものをもっているとしていいだろう。
トヨタとしては、そのような若い世代とはいままでのような新車販売体制だけでは接触機会すらないと考えているに違いない。そして、新車販売にこだわらず、さまざまな、クルマを「キー」としたサービスの提供をいま積極展開していると考えられる。