リモート商談! さらにはAI化へ! 「新車セールスマン」という仕事は消えるのか (1/2ページ)

安全装備の普及により長期休暇後の客の殺到はなくなった

 筆者は取材でアメリカや東南アジア、中国などを訪れたことがあるのだが、見た限りでは新車ディーラーは年中無休がスタンダード。ただアメリカなどでは、レクサスやメルセデスベンツを超える、超高級ブランドやスーパーカーブランドのディーラーは、「富裕層は週末別荘などへ行き余暇を楽しんでいるので、買い物はしない(買い物は平日に行う)」として、日曜が定休日(レクサスなども日曜はセールスマネージャーが休みで不在など、とりあえず店を開けておく程度)というレアケースもある。

 アメリカを例に挙げると、新車ディーラーのなかでも年中無休なのは販売部門のみで、サービス工場は日曜日が休みとなっている。トヨタや日産など一般的な量販ブランドでは、週末が稼ぎ時なのは日本と変わらないため、セールスマンがフル出勤するのは当たり前。月曜日に休んでいるようで、月曜日はほとんどセールスマンを店内で見かけない。月曜日にセールスマンがいれば、「週末に思うように販売できなかったんだな」と、筆者はいつも思っている。

 日本では、新車ディーラーの創成期は、日曜日が休みであった。当時は個人所有というよりは、法人向け販売がメインだったこともあったようだ。その後、新車が空前の売れ行きとなったバブル経済のころになると、“日曜営業”というのをアピールするディーラーが出てきた。この時はアメリカと同じくサービス部門や、総務・経理などの管理部門などは日曜休みとし、新車販売部門だけ休日出勤。販売スタッフが平日に交代で代休を取ることで、ディーラーのショールームは年中無休となっていた。バブル経済のころは、平日、週末関係なく、とにかく新車がよく売れたので、1カ月休みなくフル出勤するセールスマンも少なくなく、貯まった有給休暇を会社が買い上げるといったこともあったようだ。

 バブル崩壊後もしばらく年中無休は続いたが、そのうち新車ディーラーとしては世界的には珍しい“定休日”を設けるところが目立ち、いまはほぼすべての新車ディーラーが定休日を設けている。当初はサービス部門と管理部門が日曜日で、販売部門は平日バラバラに休むのがあまり効率的ではない(とくに販売部門が休めないケースも発生しやすい)として、全社一斉に平日を定休日にするようになった。ただ、それでも年中無休を続けていたところもあったが、今度はご多聞に漏れず“働き手”不足により、定休日を設けずにはいられなくなったのである(代休をずらしてとると、ひとりだけとか極端にスタッフの少ない日が出てきた)。新車ディーラーは労働集約産業のひとつであるが、いまではとくにセールスマンの数が不足しているなかオペレーションしている店舗がほとんどといわれている。そのような状況では、交代で休んで店を年中無休とすることなどができなくなってきたのである。

 過去には年中無休で代休も満足に取れなかった店でも、「普段は満足に休めないから」として、年末・年始、ゴールデンウイーク、お盆などはしっかり長期休暇を取得していた。そしてそれはいまも引き継がれている。運輸支局も祝祭日は休みとなるし、製造業であるメーカーも長期休暇を取るので、タイミングを合わせていたともいわれている。以前ならば、長期休暇が明けると、休暇中に事故を起こした車両の修理依頼が殺到し、その対応に忙殺されていた。しかし最近は安全運転支援デバイス装着車がほとんどとなり、昔に比べると休暇明けの修理依頼もそれほど殺到しなくなったため、長期休暇が取りやすくなったという声も聞いている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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