平均所得も下がり高額車が売れなくなっている
2020年度(2020年4月から2021年3月)に国内で売られたクルマの内、38%を軽自動車が占めた。近年では安全装備の充実もあってクルマの価格が高まり、その一方で平均所得は伸び悩む。直近では少し上向いたが、ピークだった1990年代の中盤から後半の所得水準には戻っていない。
このように所得は約25年前に比べて減りながら、クルマの価格は1.2〜1.4倍に高まったから、小さな車種に乗り替えるユーザーが増えた。その結果、上級車種の売れ行きが鈍っている。トヨタのアルファードは好調だが、姉妹車のヴェルファイアは激減しており、後者は特別仕様車(ゴールデンアイズII)以外のグレードをすべて廃止した。
日本車でこの傾向が強いのは日産だろう。売れ筋価格帯が400万円以上の車種を複数用意するが、いずれも登録台数は少ない。2020年の1カ月平均で見ると、シーマ:約10台、フーガ:約70台、フェアレディZ:約35台、GT-R:約55台、エルグランド:約300台、スカイライン:約320台になる。
とくにシーマとフーガが売れていない。発売はフーガが2009年、シーマはフーガハイブリッドのロング版で2012年であった。両車とも設計が古く、実質的に放置されている。
フーガは海外では上級ブランドのインフィニティQ70として扱われたが、北米の販売は終了した。欧州では今でも扱われるが、セダンの主力はQ50(スカイライン)で、好調に売れるのはSUVのQXシリーズだ。シーマのQ70Lも少数派になる。
このようにフーガとシーマは、国内、海外ともに元気がない。そこで販売店に尋ねると以下のような返答だった。「フーガ、シーマともに、現時点ではフルモデルチェンジを行ったり生産を終える話は聞いていない。2021年4月下旬に注文を入れると、納車されるのはフーガが7月下旬、シーマは8月だ」。
登録台数が減ったこともあり、シーマとフーガの納期は3〜4カ月と長いが注文は入れられる。それでも最近は改良を受けていない。フーガ、シーマとも、2019年12月に安全装備を中心に手を加えたのが最後だ。