万人のための乗り物への進化が最大の目的と考える
次に、法規制にのっとった適切な走行をすべてのクルマが行うことにより、交通渋滞を減らし、快適かつ短時間での移動の実現と、あわせて余計な燃料を使わないことによる環境保全の視点もある。
そのうえで、私が最大の目的と考えるのが、健常者のための乗り物から万人の乗り物への進化である。現状、クルマは健常者のためのものだ。福祉車両はあるが、介助者や介護者の手を借りるのが前提だ。一部、ホンダ・フィットには手だけで運転できるテックマチックがあり、今秋にはマツダMX-30に自操車が加わる予定だが、現実問題として障害を持つ人が一人でクルマを利用する機会は限定的だ。また、高齢者の運転免許証の返納も薦められており、移動の自立が制約されている。
しかし、完全自動運転が実現すれば、障害を持つ人も高齢者も一人ではじめての場所へクルマで移動できるようになる。こうしてはじめて、クルマが万人のための移動手段となるのだ。究極は、目の不自由な人が一人ではじめての場所へ出かけられることだと私は考えている。
いま、技術や機能の各論を論じるべきではない。目的意識を明らかにし、それに向かって世界の自動車メーカーと部品メーカー、そして法規制を行う行政や政府とが一体となり、万人にとって快適で安全な交通社会を構築するため邁進することが重要なのである。