軽に乗り続けるユーザーが多く結果的に薄利多売になりやすい
しかも、軽自動車ユーザーは、乗り換えの際に登録車へステップアップすることはまずなく、軽自動車に乗り続ける傾向が目立つ。また、購入後はディーラーの整備工場でメンテナンスをせずに、街の格安車検業者やガソリンスタンドなどを利用するひとも目立つので、ディーラーのメイン収益源であるメンテナンス入庫による利益もあまり期待できなくなってしまう。
また、放っておけば売りやすいのでセールスマンは軽自動車ばかりを売るようになり、ラインアップ全体をまんべんなく売ることができない、アンバランスな状況にも陥りやすく、新車販売の収益性が悪くなってしまうのである。N-BOX以外に満足に量販できるのは、フィットとフリード、ステップワゴンぐらいになっているホンダがその例といっていいだろう。
トヨタでは、軽自動車を販売しても、セールスマン個々の販売実績としてカウントしないところも多く、そのような“足かせ”で、軽自動車販売に安直に走ることを押さえ込んでいるのである。
ただし、トヨタ系ディーラーでは、ピクシスシリーズのほかに、ダイハツ系ディーラーと、ダイハツ軽自動車の委託販売契約を結んでいることが多い。つまり、ピクシスとしてOEM供給しているモデル以外、タントやムーヴなどもトヨタディーラーを通して購入することが可能なのである。
そこでもトヨタらしく、いったん委託販売契約を結んでいるダイハツディーラーから、当該車両をトヨタディーラー名義でいったん購入し、ナンバープレートを付けてから最終ユーザーに名義変更して販売するなどとしているディーラーもある。いわば未使用中古車を買うといったノリと考えればわかりやすいだろう。
ブランド別軽自動車年間販売台数では、スズキと激しく争うダイハツだが、その販売台数のなかで、トヨタディーラーでの販売比率が結構高いとの話も聞いている。また、タントやムーヴなどの人気モデルのOEMをトヨタが販売に乗り出せば、タントやムーヴの販売台数を目に見えて食ってしまう可能性も高く(ルーミーとトール、ライズとロッキーを見れば明らか)、通称名(車名)別軽自動車販売台数でスズキに太刀打ちできなくなってしまうのを防ぐ意味でもピクシスモデルの設定は限定的となっているようだ。
ここのところは軽自動車の販売合戦も熾烈をきわめ、以前に比べれば値引きはかなり荒れることが恒常化している。しかし、薄利多売なので生産工場の稼働率を下げることもできないので、とにかく量産も続けられる。スバルが軽自動車の自社開発及び生産をやめ、ダイハツからのOEMに切り替えて久しい(歴代スバル軽自動車ユーザーのためというところでラインアップが続いている理由として大きいようだ)。
ただ、いまの世界的にスバルが成功を収めているのは、軽自動車の自社開発及び生産をやめ、登録車に特化したためだとするひとも多い。
登録車販売だけでも圧倒的な販売シェアを誇るトヨタが、いまさら軽自動車販売に積極的に乗りだす理由は、子会社のダイハツもあるため、あえてそのようなリスキーなカテゴリーに本気で取り組む必要もないのである。