事業としてしっかり成立させるためのハードルが高い
では、VTOL型の「空飛ぶクルマ」はどのようなシーンで使われる可能性があるのだろうか?
これについては、日本の経済産業省と国土交通省が2018年12月に、「空の移動革命に向けた官民協議会」を立ち上げたなかで、中長期での普及ロードマップを公開している。
そうした思案と、筆者のこれまでのドローンや航空機に対する取材経験を重ね合わせてみると、VTOL型の「空飛ぶクルマ」の使い道は、かなり限定的だと思う。
もっとも可能性が高い利活用方法は、やはり災害時での怪我人や病院の救急輸送だと思う。
災害時だけではなく、中山間地域などで普段から交通の便が悪い環境では、救急輸送の重要性は高まる。
また、都市部や観光地での、いわゆる遊覧飛行については、不時着陸のリスクを十分に考慮すると海上や河川の上など飛行ルートは限られると思う。
そして、まるでクルマのように都市部、都市間、そして地方部など、必要なときにいつでも気軽に「空飛ぶクルマ」で移動するには、それがタクシーやバスなどのような公共交通機関であれ、または個人所有機であれ、安心安全な飛行環境を慎重に整備することはもとより、事業としてしっかり成立させるためのハードルはかなり高いはずだ。
言うは易し、飛ばすのは難し。「空飛ぶクルマ」は、クルマの自動運転や、完全EV化などに比べると、本格普及するのは相当先になるのではないだろうか。