大会に出ると「実車レース」と同レベルのスリルと楽しさ
そして迎えた当日。レース1は大田選手が走行する。「F3からF1に乗り替えた?」なんて思うほどスイスイと走る大田選手。流れる景色は違うは、ステアリング捌きはもうGT500のインカーさながらで、今さらながら衝撃を受ける。そして予選で出したタイムは1:45.499! 2番手という凄まじいラップを刻んだ。このタイム、じつに私のベストラップの4秒マイナスだ。そしてレースへ。スタートで直線スピードに勝るアストンマーティンのエヴァンゲリオンレーシングにかわされるも、限界ギリギリの走りを続け、見事3番手フィニッシュ! 見守る編集部スタッフはやんややんやの歓喜に沸いている!
その輪に加わっているようで、心のなかでひとり加われないでいる雰囲気の男の姿を見逃さなかった。それもそのはず。私なのだ。「大田さん……何やっちゃってくれてるの? あのね、これで私、3番手からスタートしなきゃじゃん」心の中の正直な声である。第1レースのリザルトがそのままグリッドになる第2レース。目論見としては後ろのほうからスタートして「スピンせず完走できましたー! みんなeモータースポーツ挑戦してみてね!」なんて用意していたコメントを語るつもりだったのに! 3番手スタートということは、後ろからサメが追いかけてくるプールで泳げといっているようなものだ。
そんな私の心情をよそに、どんどんとスタートは迫ってくる。実車のレースにも出たことのある私だが、緊張感はその比じゃない! 冗談ではなく心拍数は爆上がり! レーシンググローブの中は手汗出まくり、完走どころか干からびて乾燥してしまいそうな勢いだ。
そしてスタート! アクセルを踏む足が小刻みに動く! 「こっ、これはセナ足? もしや突如ゾーンに入ったのか?」自分に問いかけるが、単なる緊張による震えでしかなかった。奇跡的にいくつかのコーナーを3位キープのまま抜ける! 「あれ? 思ったよりいける?」なんて思ったのも束の間、ヘアピンで差されて4位に落ちた。その後もひたすら自分の走りを続けるものの、順調に(?)抜かれ、9台中8位でフィニッシュ。
結果は惨憺たるものだが、なんだこの充実感は! 実車レースと変わらぬ感動が味わえている。しかも、振り返るともっとこう走れたんじゃないか? もう少しバトルできたんじゃないか? 反省点も沸いて出てくる。単にゲームとして楽しむのではなく、こうした大会に参戦することで、より充実した趣味に昇華できるというのが率直な感想である。しかも簡単に結果が残せるわけじゃない。奥深さから考えてもいつまでも楽しめること請けあいだ。
さて、WEB CARTOP RACINGは私のふがいない結果により、ルーザーズレースに回ることになった。大田選手が走ったレース1、私が走ったレース2のタイムの合計で、4番手スタートとなる。ここで4位以内をキープできれば決勝ラウンドへとコマを進めることができるという仕組みだ。
ステアリングを握るのは兒島選手。なんと今をときめくF1ドライバー、角田裕毅選手と国内カテゴリーでしのぎを削ったこともある、リアルとバーチャル、両方とも激速のレーシングドライバーだ。そんなルーザーズは激熱のレースとなった。私レベルのドライバーが何人か入っててくれれば楽勝……なんてことはなく、凄まじいレベルのドライバーが集結! 兒島選手は一切ミスのない走りを披露するも、1周目のヘアピンでWRXに差されて5番手に! その後もコンマ1秒を削る走りで激走するが、残念ながら5位フィニッシュ、決勝進出の夢はラウンド3に持ち越されることになった。
ど素人として挑んだeモータースポーツ、そしてJeGT。結論からいえばもの凄く面白かった。もちろんレベルの差は痛感したが、それでもレースの熱量は十分に感じられ、自分なりに楽しむこともできる。加えて今回のチーム戦というところがまたよかった。ややもすれば閉じこもりがちの「バーチャルの世界」がリアルコミュニケーションの場となり、走り終わったあとの充実感が増すのだろう。
シミュレーターであるeモータースポーツを極めれば実車での走行も速くなる、かどうかは正直不明であるし、もっと言ってしまうと、両方を経験した私には「う〜ん、違うかな」である。だが、eモータースポーツだけにしかない魅力が詰まっていて、それは実車レースの下位に位置する代替的な存在ではなかった。コロナ禍のいま、お家時間を活用してぜひeモータースポーツに挑戦することをオススメしたい。
あ、ハンコンは必須です! 面白さが違います!!