自動運転技術非搭載車との混走は非常に神経を使う
渋滞路といっても速度がときには50km/hを超える場合もあり、そのときはハンズオフ状態に復帰。ドライバーの視線は前方に戻さなければならない。この程度の機能はポルシェ・パナメーラHV(ハイブリッド)やテスラなども実装している。しかし、SIPが主導することで道路交通法上も適法な作動と認められるのはレジェンドのホンダセンシングエリートが世界初となるわけだ。
実際に体験してみると、その恩恵に預かるより操作のプロトコルを覚え、意識し、注意しながら運転席に座ることはむしろ苦痛に感じた。作動条件を完全に理解し、法規を遵守しながら非自動運転車と混走することは、むしろ緊張を生み疲労が増す。
ホンダセンシングエリートはナビゲーションで目的地設定をしておけば高速出口や測道への進路変更など、ドライバーの操作が必要な場所の約1.5km手前からドライバーが運転操作に復帰するように案内を出してくる。北米や中国のような大陸で何時間もずっとまっすぐ走るようなロケーションでならドライバーの疲労を軽減する恩恵も大きいが、東京の首都高速のように曲がりくねり、複雑なジャンクションが次々と現れる交通環境では自分で運転するほうがよほど楽。
またレジェンドがホンダセンシングエリートを作動させて走行していることは外部から判別できず、たとえば走行中にナビ画面を注視しているところを警察官に現認され検挙されたら、説明し証明することは困難だ。かつてトラックに装着が義務づけられていたような速度表示ランプのように、レベル3の運転中は外部からその作動を知ることができる工夫も必要だろう。レジェンドのホンダセンシングエリート搭載車には前後にブルーのライトが点灯し他車と差別化されているが、それは自動運転を示すものではなかった。
長距離運転のトラックや観光バスなど、レベル3でも大きな安心と安全を期待できる車種や業種も多い。今は一般車より、そうした業種から搭載を促進させるほうが社会にとってより有益ではないかと感じた。
そして、ホンダにはホンダイズムとして、より突き抜けた技術の革新を期待したくなった。たとえばロボットの「ASIMO」が運転席に座り完璧なドライバーとして機能したら、クルマに自動運転機能を装着する必要がなくなり自動運転ではなく自立運転が可能となる。軽自動車からトラック/バス、F1まで乗りこなす新世代「ASIMO」が登場したら面白い。そんな未来があっていいではないかと想いを馳せた。