ローテーションもできるし同サイズのほうがラク! それでも前後で「異なるサイズ」のタイヤ装着車が存在するワケ

ハイパフォーマンスカーはリヤタイヤが大きいものが多い

 乗用車の場合、世のなかの大半のクルマは、前後同サイズのタイヤを装着している。だからこそ定期的にローテーションを行なうことで、タイヤを長持ちさせることもできるわけだが、一部のスポーツカーなどは、例外的に前後で異なるサイズのタイヤが選ばれている。

 たとえばトヨタのGRスープラ(RZ)は、フロント255/3ZR19、リヤ275/35ZR19の組み合わせ。日産のフェアレディZ(Z34)はフロント225/50R18、リヤ245/45R18、ホンダのS660だとフロントが165/55R15、リヤが195/45R16になっている。ポルシェやフェラーリなどのハイパフォーマンスカーも、リヤタイヤが大きいのが基本だ。

 これらのクルマのタイヤサイズがなぜこのような組み合わせになっているかというと、フロントとリヤのタイヤにかかる負担がかなりアンバランスになっているため。

 タイヤには以下の四つの役割があり

 荷重支持機能(車体や乗員、荷物などの重さを支える)

 制動・駆動機能(エンジンやブレーキの力を路面に伝えて車を発進、減速させる)

 進路保持機能(行きたい方向に曲がったり、直進を保つ)

 衝撃緩衝機能(路面の凸凹による衝撃を吸収して緩和する)

 これを「タイヤの四大機能」というが、ミッドシップやRRの場合、重量バランスがリヤヘビーなので、まず荷重支持機能だけでもリヤタイヤにより大きなキャパシティが要求される。そしてハイパワーな後輪駆動車であれば、駆動力を路面に伝えきるためにもより大きく太いタイヤが必要になる。(ほかの条件が同じなら、タイヤは幅広・大径のほうがグリップ力は高い)

 つまり、フロントタイヤとリヤタイヤの仕事量に大きな差があるので、リアタイヤの負担をフォローし、前後のバランスを整えるために、異なるサイズのタイヤでセットアップされているというわけだ。

 ただ、サイズだけで吸収しきれるものではなく、多くの後輪駆動のスポーツカーは、リヤタイヤだけが早く減っていく。たとえばNSX(NA1)などは、フロントタイヤよりも2~3倍早くリヤタイヤが摩耗するといわれていて、そのことからもリヤタイヤの仕事の大きさがわかるはず。

 だとすれば、同じ原理でFF車はフロントタイヤだけサイズアップしてもいいのでは、と思うかもしれないが、理屈上はそれも正解。

 実際、競技車両ではそうしたセッティングも珍しくないが、ストリートで試してみると、ワンダリングも気になるし、フィーリングも今ひとつと、メリットよりデメリットが勝る感じでおすすめできない。タイヤサイズがハンドリングやパフォーマンスに与える影響は大きいので、ドレスアップをするときは慎重に検討してほしい。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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