繊維もクルマを支える重要な素材だ
ナイロンは、タイヤの構造部の繊維としても利用されており、クルマにまつわるあらゆる面で材料不足の状況に陥っているようだ。今日、半導体不足も懸念されているが、世界での新車生産にさまざまな課題がのしかかってきているのを実感する。
くわえて、世界的な脱炭素への要求が高まり、一時はパリ協定から脱退した米国が新政権となって復帰するにあたり、脱炭素の先進的な役割を同盟国である日本とともに果たそうとしている。菅 義偉総理大臣の2050年の脱炭素の目標でもすでに国内ではさまざまな動きがあり、SDGsを念頭に置いた企業活動の模索が始まっている。しかし、これまで欧米に比べ緩やかな二酸化炭素(CO2)削減での事業計画を立ててきた日本企業は、自動車産業のみならず各方面で困惑する状況だ。
自動車業界においても、総論は賛成でも、各論、すなわち具体的な取り組みは策が見通せないなど、約550万人とされる就業者の処遇も含め、異論もある。しかし明らかになってくるさまざまに不都合な状況は、すでに世界77億人といわれる人間の多さに起因しているといわざるを得ない。そして、新車販売においても、その数が限界を超えようとしている証と見ることができる。つまり、これ以上、人もクルマも増やせないという予兆だ。
そこから、CASEのひとつであるシェア=共同利用の発想が生まれる。そこにまた、SDGsに通じる持続可能な開発を観ることができるのである。
世界13億台とされる自動車保有台数を半分にするほど大きく減らしても、共同利用を導入すれば消費者は不自由しないで移動できると考えられている。必要なのは、クルマでは自動運転であり、加えて便利な情報通信と、空き車両の管理だ。技術としては人工知能(AI)の進化が求められる。そのうえで、スマートフォンを活用し待ち時間なしで配車できるような仕組みが構築されれば、自宅に適切な時間にクルマが迎えに来ることになる。
材料不足を補いながら、スマートフォンなど通信の分野に材料供給を集中し、新たな移動社会を構築すれば、暮らしはもっと便利になるかもしれない。また、環境も改善され、快適な暮らしを営むことができるのではないか。
「大変だ」と、危機をとらえるのではなく、原因を的確に探り、次への一手を打つことこそ、未来を切り拓く。そこが今を生きる人々の為すべきことであろう。