「電制オフ」が「当たり前」は過去の話! いまどきのサーキットでの「横滑り防止装置」との付き合い方

ドラテク向上のアドバイザーとして優秀なシステムだ

 2012年10月以降、国産の新型車とフルモデルチェンジしたモデルには装着が義務づけられているESC (Electric Stability Control)=横滑り防止装置。トヨタはVSC 、日産とスバルはVDC 、ホンダはVSA 、マツダはDSCなどとも呼んでいるが、基本は同じだと思っていい。

 いずれもGセンターやヨーレートセンサー、各ホイールの回転センサーからの情報を専用コンピュータが演算処理して、スリップやスライドの危険性を感知した際、エンジン出力を制御したり四輪個別にブレーキ圧を制御して、アンダーステア、オーバーステア、スピンなどを回避し、安定した姿勢を保てるように制御が働く。

 これは非常に有効なシステムで、事故抑制効果が高いだけでなく、ドライバーエイドとして優秀すぎるので、ドライバーの技量を競うモーターレーシングでは、競技性をスポイルすることが懸念され、トラクションコントロール、ローンチコントロールなどをレギュレーションで禁止しているカテゴリーもあるほど。

 では、競技ではなく、個人でサーキットのスポーツ走行などを楽しむときでも不要なのかというとそんなことはない。

 サーキットを走るときでも、まずはESCをオンにしたまま走ってみよう。そのとき、ESCが介入する頻度が高く、ESCのせいで止まらない、曲がらない、加速しないと思ったのならば、それはドライバー自身のタイヤへの期待値が、現実のタイヤのグリップ力より高いことを意味している場合が多い。

 前述の通り、ESCはかなり優秀なシステムなので、ESCが介入するということは、そのままだとアンダーステアかオーバーステアが出ていた状況だったと思っていい。

 その原因は、突っ込みすぎによるオーバースピード、ステアリングの切りすぎ、アクセルオンが早い、アクセルを踏む量が多い、荷重の過不足といういろいろあるが、いずれにせよESCが働いたということは、タイヤにキャパシティ以上の仕事をさせようとした結果なので、「いまのはなぜESCが介入したのか」とその原因を探り、仮説を立てて、それを試して、上手くいかなければ仮説を書き換え、再び実験……と繰り返すのが、ドラテク上達の近道になるからだ。

 そうしてある程度タイムが出るようになり、ESCの介入も減ってきたと感じられたら次のステップ。今度はESCを「スポーツモード」にしてドライブするといい。スポーツモードにすると、ESCの介入が減り、タイヤの横滑りできる量が増え、ドライバーの操作できる範囲がノーマルモードよりも広がりコントロールする楽しさが増してくる。「スポーツモード」でもESCが完全にオフになるわけではないので、派手なドリフトやド・アンダーなどは許容しない。

 ドリフト走行の練習が目的だとすれば、ESCをオフにしないと難しくなるが、そうでなければ初心者はESCオンで練習、中上級者も「スポーツモード」で走り込むことをおすすめする。かつては「ABSもパワステもスポーツ走行には不要」などといわれたこともあったが、いまはABSもパワステも当たり前の時代。ESCももうすぐ同様の扱いになるはず。

 ESCはお節介で邪魔くさいシステムではなく、ドラテク向上のアドバイザーとしてポジティブに捉えてみてはどうだろうか。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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