水素ステーションの充実は不可能! 開業が現実的にならない「条件」の厳しさとは (2/2ページ)

水素ステーションは開設までのハードルが高い!

 それというのも、水素充填スタンドが現在はまだ137か所の稼働でしかないと、トヨタモビリティ東京の記事で紹介されている。なおかつ、営業時間も制約があるはずで、場所によっては移動式であったり臨時であったりする拠点もあるはずだ。

 この原稿を執筆中の午前9時半の時点で、トヨタMIRAIのWEBサイト内にある営業中の水素スタンドは、144軒中51軒しか開いてない。そして来店前に電話で確認するようにとの注意書きもある。ゆとりをもって水素充填をしなければ、水素ガス欠となる。

 4年後の2025年度までに320か所の水素ステーションが整備される予定だが、それでも既存のガソリンスタンドの1/100だ。電気自動車(EV)用の急速充電器の約7700か所の4割程度でしかない。EVなら、その数に入らない自宅の普通充電で満充電にできる。

 なぜ水素充填ステーションの整備が進まないか、理由は簡単だ。一つの拠点に500平方メートル(約150坪)の土地が必要で、なおかつ上にビルを建てることはできない。万一、水素が漏れたことを想定すると、施設に天井があってはならないためだ。

 ことに人口の多い都市部で、150坪の土地を持つ人がビルを建てられず、一日に何台の燃料電池車(FCV)が訪れるかわからない状況で、水素充填ステーションを開こうとは考えないだろう。そもそも土地の価格が高い都市部では全く採算が合わない。

 なおかつ、水素充填ステーションの設置には数億円の費用が掛かるとされる。それに対し、EVの急速充電機なら500〜1000万円で設置可能だ。水素充填ステーションの整備には、その数十倍の投資が必要なのである。

 FCVの乗用車が普及できないのは、クルマとしての性能や、一充填での走行距離の問題ではなく、水素充填ステーションの整備がほぼ不可能だからだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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