菅総理の「2035年までに軽自動車を含め100%電動化」は無謀な宣言? 実現度と本当に必要な施策とは (2/2ページ)

軽自動車の電動化は意外にも進んでいる

 一方で、軽自動車についてはコストアップ要因となる電動化については否定的な声も少なくない。軽自動車に電動化は技術的に難しいという指摘もある。

 しかし、よく考えてみて欲しい。たしかに軽自動車ナンバーワンのホンダN-BOXはマイルドハイブリッド機構さえ備わっていないが、スズキは幅広くマイルドハイブリッドを設定しているし、日産・三菱自動車の軽自動車にもマイルドハイブリッドは備わっている。

 そして、ホンダN-BOXと、マイルドハイブリッドを搭載するスズキ・スペーシアの価格を比べると、細かい装備差を無視すれば、ハイブリッドであるスペーシアのほうが安くなっていたりする。すなわち、軽自動車の売れ筋の価格帯で全モデルをハイブリッド(電動)化することは、けっして非現実的な話とはいえないのだ。

 廉価であることが重要な軽のベーシックモデルにおいては数万円の価格差は無視できない要因ではあるが、マイルドハイブリッドを電動車と認めるのであれば、それなりに現実的な価格帯で100%電動化は可能といえる。

 とはいえ、前述したヤリスやフィットにおいてエンジン車とハイブリッド車には明確な価格帯の差がある。ある程度、現実的な価格での100%電動化は可能であろうが、どうしても平均価格が上昇してしまうことは間違いない。

 そうなると、クルマを買うということのハードルが高くなる。つまり100%電動化は技術的に可能であっても、国内での新車市場が縮小してしまう可能性は大きい。いくら電動化が進んでも新車が売れずに、環境負荷の大きな中古車ばかりが売れたのでは、パリ協定で定められたCO2排出量削減を目指す対策の一環として考えるとナンセンスだ。

 だからこそ、日本政府として新車の100%電動化を進めるのであれば、もっとも大事なのは新しい電動車両を積極的に買いたくなるような施策といえる。それも、少々の補助金をつけるという付け焼き刃の対策の話ではない。

 菅政権は、単純に規制を厳しくすれば100%電動化は進むと考えているかもしれないが、経済成長あってこそ新車市場の活況である。明るい未来の見えづらいマインドのままであれば、新車の100%電動化を進めたとしても普及が進まず、環境対策としては実効性のない目標となってしまうだろう。

 誰もが環境性能に優れた新車を買えるような社会とするには、根本的な景況感を上げるなど、経済成長が実感できる政策を打ち出すことが、もっとも重要といえるのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
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