見て分かるほどのキャンバー角をつけるのは機能的にマイナスだ
街で派手なカスタムカーを見かけたときに、あのようなカスタマイズには、見た目以外に何か機能的な価値があるのだろうか? と疑問に思ったことはないだろうか。たとえば大きなネガティブキャンバーがついた八の字タイヤ。あるいは爆音。巨大な羽根(ウイング)……。
これらはある面、レーシングカーにも共通する部分でもあり、まるで無意味とは思えないが、そのメリット・デメリットを整理してみよう。
1)ハの字タイヤ
クルマを正面から見たときのタイヤの傾き=角度のことをキャンバー角という。正面から見て、上端が狭く下側が広がった状態、つまり「ハの字」の状態は、ネガティブキャンバーと呼ばれ、レーシングカーでは2~3度ぐらいのネガティブキャンバーにセッティングすることが多い。
ネガティブキャンバーをつける理由は、キャンバーをつけるとクルマの中心に向かって曲がろうとする働きが生じ、旋回性能が高まるため。オートバイがコーナリング中にバンクしている状態をイメージするとわかりやすいはず。
さらに旋回中、クルマがロールしたときに、外側のタイヤが地面に対し垂直をキープしやすくなり、接地面を稼ぎやすくなるメリットもある。その反面、直進安定性が悪くなるので、トーをアウトに振って相殺し、サイドスリップをゼロに近づけるのがセオリー。
しかし、ネガキャンをつけすぎると、直進時の接地面が減り、制動力、トラクションともに低下する。直進性も悪化し、タイヤの偏摩耗を引き起こすので、機能的にはマイナスでしかない。離れたところから、ぱっと見でわかるほどキャンバーがついていたとしたら、それは明らかにつけすぎで、視覚的効果以外のメリットはない。