ぶっつけ本番でも「セッティングの鬼」と化す! 中谷明彦が挑んだ久々の本気レース「ウラ話」その2 (1/2ページ)

FFレーシングカーはリヤタイヤの効率的なウォームアップが肝

 TCRジャパンシリーズ開幕戦・富士ラウンド2戦(サタデーレース、サンデーレース)の金曜日練習走行第2枠。第1枠で使用した新品タイヤをそのまま使用する。レースセットを煮詰めていくためだ。

 車高をさらに低くし、リヤのトーインを強め、燃料を搭載してレースランのシミュレーションを行う。その結果、ラップタイムは1分50秒400が記録でき、レースラップの想定を定めることができた。翌日はいよいよ予選となるので、本来ならここでもニュータイヤで予選アタックの練習を行いたかったが、残りセット数に余力がなく断念。予選Q1アタックはぶっつけ本番となる。

 土曜日、サタデーレース予選。ニュータイヤを装着してスタンバイするが、ふと思い出したのがGT300時代のFFレーシングカー・三菱FTOでレースしていたときの戦略だ。タイヤウォーマーが禁じられた初期のころで、FFの場合はリヤタイヤのウォームアップに手を焼いた。

 そこでまずインスタレーションラップの間に前輪を温め、ピットインして前後のタイヤをローテーションしてアタックに向かう、という戦略だ。バロン氏に伝えるとすぐに理解し準備してくれた。ピットレーンがオープンになり、直にコースイン。予選計測時間はわずか15分。前輪を温めながらピットに戻り前後入れ替えだ。同じことを試すチームが2〜3あった。

 ローテーションを完了しアタックラップに入る。しかし、フロントが逆に暖まり切っておらず、前後バランスが悪い。コーナーでアンダーステア傾向が強まってしまいラップタイムは1分49秒113、自己ベストタイムながら総合8番手に甘んじた。

 次いでただちにサンデーレースの予選が始まる。今度はニュータイヤを装着し、そのままアタックを行うことにした。

 インラップで手応えを確かめつつ、アタック開始。1コーナーのブレーキングを今回もっとも奥の130mまで我慢し急制動。リヤが不安定になりヨーダンピングが発生してしまった。インのクリッピングポイントにつけそうもなく、無理やり切り込めばスピンモードに陥りそうだった。そこでインに付くのは即座にあきらめ、1コーナーはアウト・アウト・アウトのラインで速度低下を防ぐラインを選択し凌いだ。

 コンマ2〜3秒タイムロスしたと思うが、タイヤの初期グリップは1周しかもたないのでアタックを継続する必要があった。Aコーナーから100Rまでにタイヤは前後バランスよく暖まり、後半は無難にまとめて1分48秒382を記録。総合6番手。今回のチャレンジでのベストタイムをマークすることができたのだった。

 予選が終わり、土曜日の午後にはサタデーレース決勝がスタートする。タイヤはオールニューを選択。残り4本のニュータイヤをサタデーレースとサンデーレースのスタート時にフロントに装着し、リヤタイヤは予選で使ったものを装着するプランをバロン氏から提案されたが、前後バランスを崩すためオールニューを選択しスタート。

 結果、ローンチスタートは決まったが前車がストール。2台はパスしたが、1台には抜き返され、またトラブル車を避けつつ5番手でフィニッシュ。しかし1〜2フィニッシュ車両がセーフティカー明けの再スタート時に、セーフティカーを追い抜いてしまいペナルティを受けたため3位に繰り上がり入賞となった。レース中のベストタイムは1分50秒155で5番目に速いタイムだった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報