中谷塾秘伝のセッティング術で一気にタイムアップ
ウイングを立ててもストレートスピードは落ちていない。100Rでの安定性が増した。しかし、車高を下げた効果がもっとも大きく、さらに車高を下げて、ラップタイムは1分50秒739まで縮まった。しかし、この時点でタイヤの周回数はレース周回数の約3倍にあたる35周に達し、もはやグリップは低下するばかりだ。トータル47周をこなして木曜日の走行は終了となった。
他チームは新品タイヤを投入していてタイムを上げ、木曜日の総合順位は結局最下位のままだ。それでも35周走行したタイヤで1分50秒736は悪くないとエンジニア氏。おそらく新品タイヤを投入すれば1.5秒は縮まるだろうという感触を得た。
ハンドリングは相変わらずコーナー出口でリヤがスキッドアウトする傾向が強い。走行終後にバロン氏と相談すると、リヤサスペンションのバンプステアを「アウト」に設定していることが判明。おそらくFF車の特性によるプッシュアンダーステアを回避しようとデフォルト設定してあるようだが、リヤが流れてしまうとイナーシャ(慣性)でフロントも引っ張られて4輪スキッドアウトしてしまう。リヤのグリップ限界を高め、フロントをさらにターンインさせる設定をしなければならない。
さらにフロントのトーはトーアウトであるという。そこで中谷塾「秘伝のタレ」的セットアップのフロントトーインをオーダー。さらにリヤサスペンションにはバンプイン特性を設定してもらうように依頼。TCRシビック・タイプRのサスペンションはジオメトリー変更の自由度が高い。リヤキャンバー角も合わせて増してもらい、サスペンションストロークに応じリヤのグリップ応答性を向上させるようにした。
翌金曜日。走行枠は30分が3本用意されていた。連続走行で奥深くなるブレーキペダルストロークに対処するため、ミディアムコンパウンドのブレーキパッドが装着された。シビックTCRにはABSが装備されているが、スプリントレースでは使用が禁じられている。サーボもないので通常のレースカーと同じ踏力が必要だ。
ABSをカットするとEBD(エレクトリックブレーキディストリビューション)も作動しないので、リヤのブレーキ液圧が高くなりすぎる。あまりハードにブレーキを攻めると後輪がブレーキロックしやすい。フロントブレーキパッドをミディアムソフト仕様とすることで、踏力を下げて液圧が高くなりすぎない状態でフロントのブレーキ力を高めることができる。ただ心配なのはフロントのパッドフェード耐性だ。
最高速度は220km/h台と他車より20km/hも遅いことが分かっていたが、1コーナーブレーキングポイントに余裕を持って走っていたので、危険をおかさずに、そこは最後に詰めて行くつもりだ。
前日のタイヤは50周回を超えており、使用限界に達していたので、ここで新品タイヤを装着。セットアップ効果と合わせタイムは向上し、狙い通り1分49秒341を引き出せてこの走行枠では総合6位のタイムを記録できた。
以下次回に続く。