オクタン価を上げるための添加剤のような存在だった
最近はテレビで、ハイオクのCMを見かけないが、その昔は、衝撃だった日石ダッシュレーサー100など、よく放映されていた。その際に耳にしたのが無鉛ハイオクという言葉で、覚えている方もけっこういらっしゃるのではないだろうか。無鉛とは無煙と勘違いしている方もいたりするが、正解は鉛が無いほう。しかし、よく考えると、ガソリンに鉛というのは変というか、その関係はなにかと疑問に思ったりもする。
現在はすべてのガソリンが無鉛なので鉛は入っていないが、その昔は実際に入っていて、有鉛ガソリンと呼ばれていた。こちらの名称も懐かしい方はいるだろう。先のハイオクのCMというのは、有鉛から無鉛に切り替わったという点を、大々的にアピールしていたのだ。ちなみにハイオクで完全無鉛化したのは1987年なので、CMを盛んにやっていた時期と重なる。
そもそもなぜガソリンに鉛(アルキル鉛)を混ぜていたかというと、オクタン価を上げるためというか、鉛を入れないと上げられなかったから。入れると10〜15%ほどオクタン価を上げることができるので、とくにハイオクで重宝された。またヘッド内部のバルブが常時当たるバルブシートと呼ばれる部品に付着してクッションとなり、摩耗するのを防ぐ効果もあった。
ただ、鉛を含んだ排気ガスによって鉛中毒になる可能性が指摘され、世界的に廃止へと大きく舵を切ることに。日本では牛込柳町鉛中毒事件をきっかけにして機運が高まり、レギュラーは1975年、ハイオクは1987年に完全無鉛化された。この移行期間中にはなにを使っているかがわかるように、無鉛ガソリンというブルーのステッカーなどが貼られていたのは、これまた懐かしい。
ちなみに牛込柳町中毒事件とは、周囲でぜん息などの呼吸器系の疾患が多く、その原因が排気ガスに含まれる鉛ではないかと言われたもの。牛込柳町の交差点は谷底のようにくぼんでいたため、排気ガスがとくに溜まりやすいのではないかというのが理由だ。実際は関係なかったようだが、無鉛化の流れはこれをきっかけに加速した。交差点で止まらないように、手前にも赤信号を設置して制御しているのが特徴で、現在でも残っており自動車遺産としてもおすすめのスポットだ。
オクタン価は現在、新成分によって鉛を配合しなくても問題ないが、バルブシートについては旧車維持でのネックにもなっている。無鉛ガソリンを長い間使用していると、バルブシートの摩耗というか、ヘッドに埋没してしまうため、対策として添加剤を入れるか、問題ない素材でバルブシートを作って、打ち変えるという方法を取るしかない。後者は手間も費用もかかるので、オーバーホールのついでに行うのが一般的だが、旧車購入の際には対策済みかを確認しておくのもいいだろう。