グリップ力が低下してスピンする危険性も!
タイヤは路面と摩擦することによりグリップ力を発揮しているので、使用すればするほど摩耗し、溝の部分が浅くなる。
保安基準では、スリップサイン(残り溝=1.6mm以下)が出たタイヤで走行することは禁止されているが、タイヤの溝が減るのは何が問題で、どんな危険があるのか。
一番わかりやすいのは排水性の問題。スリップサインが出ているようなタイヤだと、80km/h程度でハイドロプレーニング現象が起きてしまう。
また、雨の日以外の乾いた路面であったとしても、溝がなくなってきたタイヤのグリップ力はかなり落ちてくる。
もともと溝のない、レース用のスリックタイヤでも、F1などではデグラデーションといって、タイヤの摩耗により1周あたり0.2~0.5秒ぐらいずつ、ラップタイムが落ちていくことが知られている。
市販のタイヤも理屈は同じで、タイヤが摩耗し、トレッド表面のゴムが薄くなってくると、ゴムの層のたわみがなくなり、一気に滑りやすくなってしまう。
限界も低くなり、しかも扱いにくくなるのでスピンしやすくもなるし、ハンドリングも不安定になる。
また、タイヤの摩耗が進むことで、エンベロープ性能=タイヤのトレッド部分が路面の突起を包み込む性能が極端に悪化し、クルマの乗り心地の低下も招いてしまう。
他にも摩耗したタイヤはクルマの操縦安定性やタイヤの放熱性にも悪影響があるので、スリップサインが出るまで使い切るのはオススメできない。
ちなみにタイヤの溝の深さと制動距離の関係でいえば、新品時=溝の深さ=約8mmから、5分山(残り溝4mm)ぐらいまでは、濡れた路面でもほとんど制動距離が変わらないが、それ以上摩耗すると一気に制動距離が伸び始め、溝がツルツルになるまで摩耗すると制動距離は2倍近くにもなってしまう(80km/hからの制動時の例)。
というわけで、夏タイヤでも、本当は残り溝が4mmになったら新品に交換するのが一番理想。
今すぐ自分のクルマのタイヤの溝をチェックして、残りが4分山(残り溝3mm)ぐらいになっていたら、梅雨入り前に、新品タイヤに履き替えてしまったほうが安心だ。