欧州基準を導入したことでドアミラーが大型化していった
一昔前にはレーシングカーのように小型のドアミラー(エアロミラー)に交換し、空気抵抗を減らしたり、ドレスアップするのが流行ったが、最近のクルマの純正ドアミラーは、サイズ的にかなり大きくて、見栄えが悪く、デザイン的にも個性を感じさせるものが少ないのはなぜなのか。
それは2019年から後写鏡(間接視界)に関する基準が変わったことが大きく影響している。
それまでは
・走行中の振動でその機能が損なわれないように取り付けられていること
・運転席から左右の外側線上後方50メートルまでが見えること
・方向の調節が簡単で一定方向を保持できること
・サイドミラーなど車外のものは歩行者と接触した場合、衝突の衝撃が緩和できる構造であること
・鏡面に著しいひずみや曇り、ひび割れが無いこと
(道路運送車両の保安基準第44条)
といった条件をクリアすればよかったのが、新基準ではよりワイドに、より遠方まで視界範囲が求められるようになったからだ。
※後写鏡(間接視界)に関する基準(UN-R46 関係)
https://www.mlit.go.jp/common/001123618.pdf
きっかけは国際連合欧州経済委員会の基準が改定され、日本もそれに準じただけで、新車の適用時期とされた2019年6月より先に(継続生産車で2021年6月)、メーカーが欧州基準を導入したので、どこのメーカーのどの車種も同じような大きさになってしまった。
大きさは同じでもデザインはもっと個性があってもいいのでは、と思うかもしれないが、ドアミラーは空力的にはけっこう邪魔な存在で、乗員のすぐ近くにあるために、騒音=風切り音の音源にもなっている。
そのためメーカーでは、細心の注意を払ってデザインしているパーツで、個性よりも低騒音、低空気抵抗を優先している。
そうした機能的を優先すると、必然的に形も似通るわけで……。(ドアミラーの空気抵抗による馬力損失は、100km/hでおよそ1馬力、180km/hでおよそ5~6馬力といわれる。だから富士スピードウェイのストレートでドアミラーを畳むと、最高速が数km/h伸びる。)
個人的には現行の大きなドアミラーは無粋だと思うし、最近のクルマに多い広角ミラーだと距離感がつかみにくくて不満なので、もっとすっきりしたスタイリッシュなドアミラーになってくれると嬉しいのだが、保安基準の縛りがある以上、あまり期待できそうもない。
昔はオーテック・ザガート・ステルビオのような超個性的なサイドミラー(アレは一応フェンダーミラー)もあったのだが。
ただ、2016年からバックミラーの代わりに、「カメラモニタリングシステム」(CMS)を使用することが解禁になっているので、これから先には希望がある。
CMSによるミラーレス化で、カーデザインの潮目も変わってくることを期待したい。