完全な電気自動車なのになぜ? ポルシェ・タイカンに「ターボ」というグレードが存在する謎 (2/2ページ)

ポルシェのターボといえばやはり「930」だろう

 というわけで、ポルシェのラインアップにおいて「ターボ」というのはハイパーとかスペシャルといった意味合いを持っているといえる。こうした傾向はポルシェに限った話ではなく、古いパソコンに備わっていた「ターボスイッチ」は処理速度を速めるための機能をオンにするものであったし、火力の強いライターを「ターボライター」と呼ぶのも同じセンスだろう。その意味では子どもっぽい感覚ともいえるが、ポルシェが使うとロジカルに見えてくるというのは、さすがのブランド力といったところか。

 ところで、ポルシェにとってターボが最高峰という位置づけになるルーツは1970年代にある。この頃、量産市販車として、1975年に「930ターボ」をローンチしたのがきっかけといえる。

 3.0L水平対向6気筒エンジンにターボチャージャーを追加したことで最高出力は260馬力に到達。いまにして思えば、かわいらしいスペックだが、当時としては驚異的なハイパワーであり、ターボという響きがハイパフォーマンスを表現するようになったのも理解できる。

 また930ターボは、パフォーマンス重視のモデルというよりはレザーインテリアを採用するなどゴージャスな装備も差別化ポイントだった。当時、930ターボの商品企画をしたスタッフが、のちに「ターボ」というグレードが登場することを考えていたとは思えないが、そうした初代ターボのキャラクターにインスパイアされて、現在のポルシェ・ラインアップにターボと名付けられるグレードが生まれていると理解できる。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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