新品タイヤの約2割に当たる1.6mmを基準とした
タイヤには使用限度を示すスリップサインがトレッド全周の4〜9カ所に用意されている。タイヤが摩耗して、このスリップサインとトレッド面が同じ高さになると、タイヤの残り溝は1.6mmになったことを表し、4本のタイヤのうち1本でも、そして1カ所でもスリップサインが出ていると、保安基準違反になり、車検も通らなくなる(道路運送車両の保安基準 第9条)。
それにしても、なぜ法律を作るときに、タイヤの残り溝の使用限度=1.6mmと決めたのだろう?
それは海外の基準をそのまま導入し、その元となった基準が1/16インチ=1.5875mmだったからという説が有力だ。
ご存じのとおり、タイヤの内径とホイールの直径及びリム幅は、日本でもインチ単位になっている。インチは工具のソケットレンチなどがそうであるように、整数以下は1/2インチ、1/4インチ、1/8インチなどの分数で表現するのが一般的。
また、多くのタイヤの新品時の溝の深さが約8mmで、その20%=2分山が1.6mmという事情もあるようだ。
ただ、スリップサイン=使用限度とされているが、残り1.6mmまで安全を保証するというわけではない。
JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)の資料によると、濡れた路面で80km/hからブレーキをかけた場合、残り溝が約4mmから制動距離が伸び始め、スリップサインが露出した場合は、新品タイヤに比べ約10mも制動距離が伸びるというデータがある。
このことから、少なくともタイヤが4分山(残り溝3mm前後)になったら、もう高速道路は走らないほうがいいだろう。
ちなみにブリヂストンのリサーチでは、ユーザーの約4割が残り溝3〜4mmで交換しているとのことで、濡れた路面での性能が変わり始めるこのタイミングでの交換は理想的と奨励している。
近年は台風による大雨やゲリラ豪雨も増えているので、タイヤ代だけはケチらずに、残り溝が3~4mmになったら新品タイヤに交換しよう。(※溝が十分残っていても、使用開始後5年以上経過したタイヤは賞味期限切れだと思った方がいい)